ミリタリー

2026/09/27

千葉県・保田海岸で行われた『陸上自衛隊第1空挺団 水上降下訓練』

 

保田海岸で展開された精鋭たちの凄烈なる訓練

 

着水点から砂浜まで泳ぐ偵察小隊の隊員。手にするのはラバー製の20式小銃だ

 

 8月20日(木)、千葉県にある保田海岸において、毎年恒例の「第1空挺団水上降下」訓練が行われた。この訓練は、輸送機などでの移動中に緊急避難する必要があるときに、安全に水上へ降下できるようにするために行われている。

 


 

 第1空挺団は、陸上自衛隊や航空自衛隊、そして米空軍の輸送機などから降下するが、実はこれらの航空機は必ずしも目的地上空まで行けるという保証は無い。
 なぜならば、いくら万全な整備をしていても、鳥などとの衝突、機体に生じた極めて小さい亀裂などからの破壊、場合によっては敵勢力による攻撃など、様々な要因で飛行を継続できない場合があるのだ。
 その時、航空機の乗員としては機体の安定性を取り戻すため、少しでも機体を軽くしたいと考える。
 そこで、いわば乗客である空挺隊員に“早め”に降下してもらうのだ。
 もちろん、これは全員がパラシュートを背負っている空挺隊員だからこそ出来るリクエストだ。
 航空機から飛び出す訓練を受けている空挺隊員にとって、これは容易いリクエストになるが、その一方で、降着できる場所は選ぶことができない。

 

3名1組で上陸を果たす隊員。遠泳用にフィンと水中ゴーグル、そしてシュノーケルを装備している

 

自ら砂を使って偽装するほか、仲間にも砂を掛けて偽装する。砂浜は隠れる場所が少なく、偽装材料にも乏しいため、こうして砂を使う

 

仲間が警戒している間に頭に砂を掛ける隊員。砂がかかっていない背嚢と砂が掛かっている帽子のコントラストの違いに注目だ

 

しばらく様子を見て、安全を確認したのちに立ち上がる隊員。細かい砂を使った独自のカモフラージュは水陸機動団を連想させる


 仮に降着する場所が海や湖などの水上であった場合、通常とは異なる手順での降下となるため、隊員には緊急離脱のための降下練習が必要になる。
 通常の降下と水上への降下で最も異なる点は、救命胴衣の展開と落下傘の切り離しであろう。
 フル装備の空挺隊員は装備によって異なるものの、トータルで60kgから80kgと言われている。場合によっては100kg近くなる隊員もいるという。
 その状態で水上に降下してしまうと、荷物の重さに引っ張られてしまい溺れてしまうため、まず背嚢と銃を切り離したあとに救命胴衣を膨らませるのだ。
 次は落下傘の切り離しだ。着水後に落下傘を切り離さないと、浮力を失った落下傘が空挺隊員の頭上に覆いかぶさるように落ちてしまう場合がある。そうなると、非常に危険な状態になってしまうため、落下傘は切り離す必要があるのだ。

 

木更津駐屯地に所在する第1ヘリコプター団のCH-47JAから降下する隊員

 

着水した瞬間に切り離される13式落下傘。はやく切り離すと高所からダイブすることになるので、非常に危険だという

 

ボートで砂浜近くまで運ばれてきた隊員。着水してずぶ濡れになっても涼しい顔をしているのは、さすが空挺隊員である

 

着水した隊員と装備を回収した施設中隊の隊員。こうしたサポートがあるからこそ、水上降下訓練は行うことができるのだ

 

訓練の視察に訪れた空挺団長。途中でしぼんでしまった救命胴衣を気に掛けていた


 そして、おおよその高度を測るための目標物がない水上への降下は、高さを見誤る可能性が高い。仮に水面から10mの高さで落下傘を切り離してしまうと、着水時の衝撃でケガをするかもしれない。
 そのため、安全に落下傘を切り離せるよう、足が入水した瞬間に落下傘を切り離すのだ。
 そうすれば、救命胴衣の浮力で浮上でき、切り離した落下傘は最後の浮力を使って自然と空挺隊員から離れていく。
 こうして無事に着水したあとは泳いで陸地を目指すが、この訓練はあくまでも水上への降下を訓練するためのもの。遠泳は行われず、隊員と装備はボートや協力してくれる漁船に回収された。
 なお、例年13式落下傘を使用した降下のみを行うが、今年は久しぶりに自由降下での訓練も行われた。
 自由降下は一連の状況下での訓練となっており、水上降下から遠泳、砂浜への上陸までの行動を確認した。
 その後、13式落下傘を使用し、1度に3名、計10旋回の30名が水上降下した。

 

海水を吸って重くなった装備を軽々と持ち上げて運ぶ空挺隊員。今回は重い荷物が入っていないということだが、それにしても屈強である

 

訓練で使用した東京マルイ製の20式小銃ラバーガン。ノズルとマガジンには訓練用を示す青いテープが巻いてある

 

20式小銃のラバーガンが収められていた小銃ケース。布製であるため、ある程度乾かしてから駐屯地へと持ち帰る

 

数年振りに行われたという自由降下での水上降下。普段見ることのないレアな光景である

 

顔と荷物、そして銃だけを水面に出して泳ぐ様はまるで水陸機動連隊の様だが、彼らは紛れもなく空挺隊員である

 

降下で使用した落下傘を片づける落下傘整備中隊の隊員。この後、駐屯地に持ち帰り、塩抜き処置をして再度使用されるが、一部の古い物は廃棄される

 

降下してきた隊員をボートで回収する施設中隊の隊員。背中を向けているのは回収してきてもらった装備を回収する偵察小隊の隊員だ

 

訓練の合間には使わせてもらっている海岸のゴミ拾いも行う。こうした行いが、地元との良好な関係を築く

 

 

Text & Photos:武若雅哉

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年11月号に掲載されたものです。

 

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