ミリタリー

2026/01/28

令和7年度 北部方面隊戦車射撃競技会

 

令和7年度北部方面隊戦車射撃競技会は、日本中の戦車部隊が勢揃いして戦い抜く、これまでにない大規模な内容となった。標的をホンモノの戦車のように“見つけづらい” ものとし、今回から難易度をアップ。優勝を手にしたのはどの部隊か!!

 

第11戦車隊の90式戦車による第1状況における横行行進射撃。部隊が冠する数字を十と一の漢字表記に分解し、それを合わせて“士” とした「士魂」が部隊マーク。日本的な着想に、このマークの人気は高い

 

 2025年11月21日から12月1日までの間、北大演こと北海道大演習場島松地区において、「令和7年度北部方面隊戦車射撃競技会」が行われた。
 毎年、北海道で開催される恒例の射撃競技会ではあるが、北部方面隊と第7師団が交互に主催している。よって、北部方面隊としては2年ぶり。しかし、どちらが主催であっても、基本的に北部方面隊の全戦車部隊が毎回参加しており、内容に変化はない。
 今回は第7師団の第71、第72、第73戦車連隊、第7偵察隊、第2師団の第2戦車連隊、第5旅団の第5戦車隊、第11旅団の第11戦車隊、西部方面戦車隊からトータル152両、人員約400名が参加した。
 注目は、初参加となった西部方面戦車隊だ。この部隊は、玖珠駐屯地(大分県)に所在しており、今回わざわざ射撃競技会へと参加するために、フェリーで九州から北海道までやってきた。
 西部方面戦車隊は2018年3月27日に西部方面隊直轄部隊として新編された。一見すると歴史は浅く見えるが、これまで九州地区を守って来た戦車部隊が前身であり、併合、改編を重ねて、西部方面戦車隊となった。
 大元となったのは、第4師団隷下の第4戦車大隊と第8師団隷下の第8戦車大隊だ。2014年の中期防衛力整備計画において、第4師団は地域配備師団、第8師団は機動師団へとそれぞれ改編されることが決まった。これを受け、第4師団には第4偵察戦闘大隊が、第8師団には第42即応機動連隊が、それぞれ新編されることになり、新たに16式機動戦闘車が両部隊に配備され、その代わりに第4及び第8戦車大隊は、廃止されることが決まった。
 しかし、中国の脅威に脅かされている九州地区から戦車を全廃するわけにはいかない。そこで、方面隊直轄部隊として生まれ変わることになった。

 

4両が一直線に並び、次から次へと戦車砲弾を撃ちこんでいく。標的は今回から目立たない色にされ、発見を難しくした

 

キャプション隊員たちが大急ぎで準備しているこの板は、敵兵を表す標的。これに対して、機関銃で射撃を行う

 

射撃を終えて戻って来た第71戦車連隊第4中隊の10式戦車。仲間たちが部隊ののぼりや旗を振って健闘を讃えている

 

第1状況の稜線射撃を行う第71戦車連隊の10式戦車。第7師団に3個ある戦車連隊の中で、この部隊だけが10式戦車を運用している

 

今回から採用の新しい熱源標的。正方形のもので、180cm×180mもの大きさがある。2つとも戦車を模したもの

 

 第4戦車大隊は、2個戦車中隊編成だった。もともと74式戦車を配備していたが、廃止直前に第1中隊に10式戦車が配備された。ユニークなのが第2戦車中隊だ。こちらは74式戦車に変えて、水陸両用車AAV7が配備された。これは来るべき水陸機動団新編に備えるためであり、2018年3月27日に水陸機動団が新編されると、第2戦車中隊は、水陸機動団戦闘上陸大隊へと編入された。
 第8戦車大隊は、4個戦車中隊編成だった。2014年に10式戦車が配備され、これまで配備してきた74式戦車とのハイブリッド部隊となった。その後、第4戦車中隊は廃止され、人員の一部は第42即応機動連隊へと異動した。
 こうして、西部方面戦車隊は、第4戦車大隊の1個中隊、第8戦車大隊の3個中隊を併合し、計4個中隊編成にて誕生した。この時点では10式戦車と74式戦車の両方を配備していたが、2019年に74式戦車を全廃させ、さらに第3、第4戦車中隊も廃止。これにより、2個戦車中隊編成へと縮小された。
 通常は、日出生台演習場(大分県)で射撃訓練を実施している。今回は、射撃練度の向上を図るべく初めて戦車射撃競技会へと参加することになった。他の戦車部隊と射撃することはこれまでなかったため、隊員たちにとってかなり良い刺激になったことだろう。
 射撃は1チーム4両で実施していく。戦車部隊のミニマムな部隊編成は、2両からなる班である。そしてその班を2つあわせて、戦車4両にて小隊を編成する。よって、小隊単位で競い合うことになる。

 的を大きく外したり、射撃までに時間がかかったり、決められた動作が行われなかったりすると減点となる。連日前半に10式戦車、後半に90式戦車による射撃というのが決まったスケジュールとなっていた。
 安全係が手旗を振って準備が整ったことを報告。状況開始の合図とともに、A班とB班に分かれて射撃をする第1状況へ。まずB班が稜線上から射撃をする。この射撃支援を受けながら、A班は、横行行進射撃(横に移動しながら射撃)を実施し、移動目標を撃破しつつ会場中央の開けた場所へ。特科火砲が敵を砲撃(想定のみ)している間に、B班も開けた場所へと移動し、A班と合流。ここからは4両で射撃をしていく第2状況へ。前進し、途中で停止して射撃。引き続き前進し、躍進中に敵歩兵を発見。戦車砲ではなく、搭載機関銃にて射撃。再び敵の戦車及び装甲車に向けて戦車砲を射撃。

 

白馬を部隊マークとして描いた第72戦車連隊の90式戦車。北恵庭駐屯地に所在する

 

射撃準備位置にて待機中の第73戦車連隊の90式戦車。この部隊は勝兜をマークとして砲塔に描いている

 

稜線射撃を行う第73戦車連隊の90式戦車。同連隊の第3中隊が、「中隊対抗の部」で優勝を果たした

 

射撃を終えた第2戦車連隊の4両が一列に陣形を整えて戻って来た。機甲師団である第7師団をのぞくと、戦車を連隊規模で編成しているのは、第2師団(司令部:旭川駐屯地)のみ

 

第2戦車連隊の90式戦車。同連隊は、4個戦車中隊が編成されており、第1中隊は10式戦車及び90式戦車、第2、第3中隊は90式戦車、第4中隊は10式戦車をそれぞれ運用している

 

稜線射撃を行う第2戦車連隊の10式戦車。今後、中隊数の削減、それに伴い連隊から大隊への縮小も検討されているとか…。部隊は上富良野駐屯地に所在している

 

 ここで敵の対戦車ミサイルを確認し、4両は一斉に後退。ここから第3状況へ。後退中に敵歩兵を発見し、移動しながら約200発の機関銃弾を射撃する。最後は停止して敵戦車に対し射撃する。
 ここで車長は車内へと入り、ハッチを締めて第4状況へ。小隊長は特科部隊へ射撃を要請。それが開始されたならば、4両は停止することなく、戦車砲並びに機関銃を射撃しながら一気に前進していく。これにて状況終了となる。各ターンは約20分程度。あっという間だ。
 今回、大きく変わった点がある。それは標的だ。ふいに起き上がり敵の現出を表している点は同じ。しかし今回からは、“リアルな戦場”を再現するため、この標的を目立たない色とした。これまでは、競技会の進行を優先したため、敢えて目立つ色で着色していた。さらに各標的に電気を流して本物の戦車と同程度の熱を与え、それを赤外線センサーで捜索できるようにした。いずれもウクライナ戦争を教訓とした新しい取り組みだ。
 かくして、令和7年度北部方面隊戦車射撃競技会は予定通り終了した。
 総合部門に当たる「部隊対抗の部」で優勝したのは第2戦車連隊だった。この部隊は、道北を守る第2師団の隷下部隊であり、10式戦車と90式戦車を配備している。「中隊対抗の部」で優勝したのは第73戦車連隊第3中隊だ。第73戦車連隊は90式戦車を配備している。昨年の第7師団戦車射撃競技会にて「部隊対抗の部」優勝を果たしており、今最も脂ののっている部隊と言える。そして「小隊対抗の部」で優勝したのは第72戦車連隊第3中隊第1小隊だった。
 最新のシステムやセンサー、高い運動性能を持つ10式戦車が圧倒的優位にあり、90式戦車を凌駕すると思いきや、毎回90式戦車が健闘しているのが意外だ。
 2026年は第7師団主催として戦車射撃競技会を開催予定。なお、地方協力本部等自衛隊機関を通じた招待制ではあるが、一般見学も可能。皆様も機会があれば、実際にこの大迫力の戦車射撃をその目で見て欲しい。

 

応援にも力が入る西部方面戦車隊の面々。遥々九州から北海道まで駆け付けた

 

横行行進射撃を行う西部方面戦車隊の10式戦車。地の利はない北大演ではあるが、見事戦い抜いた

 

砲塔に描かれている新部隊マーク。第1中隊は弓を引く武者、第2中隊は狼となっており、本部管理中隊が月(皆既月食)となって照らしている。火球の中から砲弾が飛び出して行くのが見えている

 

今回初参加となった西部方面戦車隊。今後も継続して参加していくかは不明。「移動費がかなりかかるので、難しいのでは…」と言うのが部内の見立て

 

2個戦車中隊とかなり寂しい陣容となってしまった西部方面戦車隊。しかしながら、奄美大島や徳之島など、今一番危機レベルの高いエリアへと派遣されるなど、重責を任されている部隊でもある

 

 

Text & Photos:菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年3月号に掲載されたものです。

 

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