ミリタリー

2026/02/07

現代アメリカ海兵隊の戦い方 射撃訓練&銃器ラインアップ【M249/M4+M203編】

 

大変革を進めるアメリカ海兵隊に注目

 

 

 現在、アメリカ海兵隊は世界的な安全保障環境の変化を受け、戦車部隊を全廃したり、砲兵部隊(通常の火砲を装備)を大幅削減する一方で、歩兵部隊に加え対艦ミサイル部隊、防空部隊、兵站部隊などを擁するMLR(海兵沿岸連隊)を新編したり、ロケット砲兵部隊や無人機部隊を増強するなど大変革を進めつつある。それは、我が国の安全保障とも密接に関係していると言っていいだろう。
 そこで、アームズマガジンWEBでは改めてアメリカ海兵隊に注目。少し前の記事にはなるが、フォトジャーナリスト・笹川英夫による沖縄の31st MEU(第31海兵遠征隊)への取材記事(「月刊アームズマガジン」2023年8月号および9月号掲載)を抜粋、再構成してご紹介していく。取材ではアメリカ海兵隊の主要な職種である歩兵を中心に、各種訓練や装備などを収録。ここでは第1回と第2回でご紹介した小銃射撃訓練の続きとなるバリケード射撃&シュート・オン・ムーブに加え、M249分隊支援火器とM4カービン+M203グレネードランチャーをピックアップする。

 

 

第1回 M27 IAR編はこちら

 

第2回 M4A1/M16A4編はこちら

 

第3回 Mk13 MOD7/M240B/M18/M9編はこちら

 

第4回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【前編】はこちら

 

第5回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【後編】はこちら

 

第6回 市街地戦闘訓練に臨む第4海兵連隊に密着 はこちら

 

 

ARQに伴う小銃射撃訓練

 

射座の前で待機する女性兵士は後方職種のようで、M16A4を装備。プレートキャリアのMOLLE/PALSには支給品のマガジンポーチが装着されている。装着位置は射手によって異なり興味深い

 

 2023年5月、沖縄県金武(きん)町にあるキャンプ・ハンセンにて、31st MEUをはじめとする沖縄駐留アメリカ海兵隊員の小銃射撃訓練を取材させていただいた。

 アメリカ海兵隊は“Every Marine a Rifleman:すべての海兵隊員はライフルマンであれ”をモットーにしているように、兵士個人の射撃技術をとりわけ大事にしている。その一例がARQ(Annual Rifle Qualification:年次ライフル適格性評価)であり、パイロットだろうが後方職種だろうが全海兵隊員が定期的にクリアせねばならない。

 取材した小銃射撃訓練はこのARQに伴うもので、31st MEUだけでなく3rd MARDIV(第3海兵師団)、3rd MIG(第3海兵遠征軍情報群)など3rd MEF(第3海兵遠征軍)に所属する様々な職種の海兵隊員が、10カ月後に予定されるARQに備えて射撃訓練に臨んでいた。

 ここではまず、第1回と第2回では掲載しきれなかった「シュート・オン・ムーブ」の模様をご紹介する。

 

訓練の前にM16A4をテイクダウンしてボルトを抜き出し、教官がボルトの状態を確認する。注油不足で作動不良を起こさないようにするためと思われる

 

教官の指示で前進しながら射撃(シュート・オン・ムーブ:Shooting on the Move)する

 

M27 IARの射撃中、マグチェンジを行なう海兵隊員。マガジンはMAGPULのPMAG(残弾確認ウィンドウ付き)

 

このシュート・オン・ムーブ訓練ではサプレッサーを外し、イヤーマフを使って射撃。手前のEOD(爆発装置処理員)のパッチを付けた隊員の隣に左利きの射手が接近しているため、教官がボードで手前の射手に薬莢が当たるのを防いでいる

 

訓練後、マンターゲットの着弾点にパッチ(Target Pasters)を貼っていく作業。パッチを貼ることでターゲットを再利用できるようになる。スコア確認と射撃を繰り返し、射撃技量向上に励んでいた

 

訓練後、笑顔の1枚。回収した空薬莢でヘルメットが満杯になっている

 

 

M249分隊支援火器

 

 

SPEC

 

使用弾:5.56mm×45
全長:1,035mm
銃身長:470mm
重量:7.72kg(未装填時)/10.86kg(200発装填時)
作動方式:ガス圧利用式
装弾数:200発(M27弾帯+箱型マガジン)/30発(M16用マガジン)

 

 M249はFN(現FNハースタル)で開発された軽機関銃、MINIMIのアメリカ軍仕様で、FN USAが製造。分隊支援火器として、海兵隊のみならず、アメリカ軍に広く配備されている。
 1980年代、アメリカ軍において歩兵が携行していたM60機関銃は7.62mm×51弾を使用。射手と弾薬手の2名が必要で、重量が本体のみで10Kg超と機動力にも欠けていた。
 そのため米軍は、軽量で歩兵部隊に随伴可能な軽機関銃を「分隊支援火器」という新たな区分で導入しようと試みた。分隊支援火器の要件は「制式小銃と弾薬を共用」「1名での運用が可能な重量」とされた。つまりは当時の制式小銃M16と同じ5.56mm×45弾を使用し、弾薬をフル装填しても10kg程度の軽量な機関銃が求められたのである。そしてトライアルの結果、FN MINIMIがM249として制式採用された。
 M249は高い制圧力を持ち、伏射で運用すれば充分な精度を持っていた。しかし、初期モデルでは動作不良などの不具合も頻繁に発生。改良のためPIP(Product Improvement Program)キットが開発され、一般部隊で運用されるM249に組み込まれていった。
 M249は数多の実戦を経験し、改良を重ねつつ運用され続けている。アメリカ海兵隊においては後に採用されたM27 IARに分隊支援火器の機能を持たせているものの、M249を完全に置き換えてはいない。やはり持続的な火力と機動力のバランスに優れたM249の強みは、捨てがたいものであるようだ。

 

PIPキットの主な改良点はストックの変更とハンドガードの銃身上部への拡張、バイポッドの強化など

 

ハンドガードには左右側面と下面にピカティニーレールを備える。下面のレールにはフォアグリップが装着されている

 

レシーバー上にもピカティニーレールが装備され、各種光学サイトを搭載可能。グリップの上にはクロスボルト式のセーフティが配されている

 

 

PIPキットで変更されて以降も、ストックは数回アップデートされている。写真のモデルは伸縮タイプで、光学照準器の搭載を前提として大型のチークパッドを備えている

 

 

M4A1カービン+M203グレネードランチャー

 

 

M203 SPEC 

使用弾:40mm×46グレネード
全長:380mm
銃身長:305mm
重量:1.36kg
作動方式:シングルアクション
装弾数:1発

 

※M4A1の解説およびスペックについては第2回記事に掲載

 

 M203はM16やM4など小銃のアンダーバレル(銃身より下の位置)に装着可能なアドオンタイプのランチャーであり、アメリカ軍には1970年に採用された。それ以前から使われていたM79は大柄な木製ストックを備えた中折れ式の単発式ランチャーで、シンプルな構造で精度や信頼性は高かったものの、小銃と同時に携行できるサイズではなかった。そのため射手は拳銃程度しか装備できず、再装填時に大きな隙を晒すこととなり、また小銃手が1人減ることから歩兵分隊の火力も減少してしまうという問題があった。それらを解消すべく開発されたのがM203というわけだ。
 M203も構造自体は非常にシンプルで、砲身内に直接弾薬を装填する機構とシングルアクション式の発射メカを採用。砲身を前方にスライドさせることで排莢とコッキングが同時に行なわれ、装填、発射の動作を短縮化。また、小銃にマウントしておけば再装填中に接敵しても小銃での応戦が可能となる。こうした特徴から、グリップや照準器などのアタッチメントを装着することでランチャー単体での運用も可能だが、専らアドオンランチャーとして使用されてきた。
 アメリカ海兵隊においては、ファイアチーム(分隊をさらに分割した射撃班)のリーダーがグレネーダーとしてM203を装着した小銃を携行するものとされてきた。遮蔽物の陰に隠れているなど、小銃による直接射撃が無効な敵に対し、放物線を描くグレネードの弾道を活かして攻撃、強制的に遮蔽物から移動させたり、移動を封じることで有利な位置へと移動するなど、使い勝手も良好。そしてグレネーダーは練度維持のため、通常の訓練以外に3カ月に一回の資格試験が義務付けられている。
 なお、後継となるM320A1は小銃への装着も可能だが、以前ご紹介したように別々に運用されることが多いようだ。

 

カービンサイズのM4A1にM203を装着しても、全体的にはコンパクトに収まっている

 

射撃後にバレルを前方へスライドさせると、空薬莢がトリガーハウジングに固定されて排莢される。単純な造りながら非常に効率的な設計。なお、バレルには専用のフォアグリップが追加装備されている

 

光学サイトはTrijiconのACOG。対物レンズにキルフラッシュが取り付けられ、その脱落防止として針金が巻かれている。ハンドガード上にはAN/PEQ-15レーザーデバイスを装備

 

これら銃器は、キャンプ・ハンセンの敷地内にある武器庫で見せていただいた。ここを管理するCLB(Combat Logistics Battalion:戦闘兵站大隊)-31は、31st MEUの兵站(ロジスティクス)を担う重要な部隊だ。取材時には使い込まれたM16A4などの分解整備が行なわれていた

 

 

電子書籍版も発売中!!
「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」

 

 

 最後にちょっと宣伝になるが、「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ最新刊となる『イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編』が発売中だ。

 「用兵思想」とは、戦争のやり方や軍隊の使い方に関するさまざまな概念の総称である。これについて知っておくことで「その軍隊がどのような任務を想定し、いかに組織を作り戦うか」といったことを理解できるようになる。

 本書では現在進行中のアメリカ海兵隊の大規模な変革と、それを必要としている海兵隊やアメリカ海軍、さらにはアメリカ軍全体のあたらしい用兵思想、それを実行するために編成される海兵隊のあらたな部隊とその装備、指揮統制の方法などを、イラストとともにくわしく解説している。

 

 

 

 

 

日本周辺の有事におけるアメリカ軍の戦い方が見えてくる

 

 本書では「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ(ホビージャパン刊)を手掛ける田村尚也が解説を、しづみつるぎがイラストを担当。現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由や、その用兵思想がわかりやすくまとめられている。

 日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、お薦めしたい1冊だ。

 

 

 

Text & Photos:笹川英夫/アームズマガジンウェブ編集部

取材協力:U.S.MARINE CORPS 31st MEU

 

 

 

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年9月号に掲載されたものから抜粋、再構成されたものです。

 

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