ミリタリー

2025/12/12

Seoul ADEX 2025 ソウルエアショー

 

Seoul ADEX2025

 

韓国が威信をかけて開発した国産ステルス機KF-21ポラメ。ポラメとは韓国語で「若鷹」という意味。韓国空軍の象徴としてポラメという言葉は度々使用されている。写真は単座型

 

韓国の首都ソウルにおいて、2年に一度開催される軍事見本市Seoul ADEXが今年も開催された。今回も韓国国産のステルス戦闘機KF-21ポラメの機動飛行、アクロバットチーム「ブラックイーグルス」の曲技飛行など盛りだくさん。武器輸出が好調な韓国航空産業の勢いは凄かった!!

 

韓国空軍の曲技飛行チーム「ブラックイーグルス」。飛行を終え、エプロンに戻ると、コックピット内で国旗を広げるのが定番となっている

 

コックピットに乗り込むKF-21パイロット。キャノピーの下には、韓国国旗と共同開発国であるインドネシアの国旗が描かれている

 

韓国陸軍の装輪型自走対空砲であるK30飛虎(ピホ)。日本の87式自走高射機関砲含め、同様の装備は装軌式が主流の中、いち早く装輪式を採用した

 

 ソウルエアショーとの呼び名で親しまれているADEX―。
 奇数年にソウル市に隣接する城南市にあるK-16ソウル空軍基地で開催される軍事見本市である。
 ソウル空軍基地は、ソンナム基地やソンナム空港とも呼ばれている。ソウル中心部から非常にアクセスしやすい場所にあり、大統領専用機(空軍1号)が配備されているのが特徴だ。大統領が、大統領府である青瓦台から移動する際に、万が一ヘリが使えない場合でも、車で来られる距離だ。また、韓国を訪問したVIPがこの基地に降り立つことも多い。韓国の玄関口として使われることから、正面ゲートは、韓国風の立派な門構えとなっている。
 ソウルから交通アクセスがしやすいという点から、ADEXの会場ともなった。滑走路があるので、そこで航空機のデモフライトを行い、エプロン地区にパビリオンが設置され、各社のブースを並べる方法をとっている。
 しかしながら、今回のADEX2025は、これまでのスタイルを改め、エアショーとトレードショーを分けた。10月17日から19日までをエアショーとしてソンナム基地で、20日から24日まではトレードショーとしてソウル市内にある見本市会場KINTEXで、それぞれ分散して開催した。35 ヶ国から約600もの企業や団体が参加し、過去最大規模となった。

 

KF-21に搭載される空中発射型巡航ミサイル・KEPD350Kタウルス。スウェーデンとドイツが共同開発した。韓国はタウルスをベースに独自の巡航ミサイルを開発する計画がある

 

尾翼に特別塗装を施した複座型のKF-21も展示された。あわせて開発中のドローンも展示。これらの装備は後席で操縦するという

 

韓国空軍ではF-35Aも運用しており、KF-21と並べて展示された。この両ステルス機が今後の韓国空軍の主力戦闘機となる


 エアショーパートについては、連日多くの航空機が飛行した。しかし、国際的な軍事見本市としては、海外軍機の参加は無し。米軍機のフライトも予定されていたが、キャンセルとなった。結局ローカルショーとはなったものの、韓国軍の最新鋭ステルス戦闘機KF-21ポラメが地上展示のみならず、かなり派手な機動飛行を実施し、大きな話題となった。
 韓国政府は、F-4D/EファントムⅡ及びF-5E/Fタイガーの後継として、戦闘機の国産開発を決めた。過去、米ロッキード・マーチン社の技術支援を受けて国内開発した練習機T-50を戦闘機へと改造したFA-50を生み出し、初の戦闘機の国産化に成功している。このT-50ならびにFA-50は、輸出も好調。こうした実績と経験の積み重ねが、自信につながり、KAI(韓国航空宇宙産業)が中心となり、後にKF-21と命名されるKF-Xプロジェクトが始動した。当初トルコも興味を寄せたが、話はまとまらず、最終的にインドネシアが参画。韓国政府が60%、KAIが20%、インドネシアが20パーセントと株式を保有。こうしてKF-21が完成した。単座機と複座機の2種類が製造され、2022年に初飛行に成功する。早速ADEX2023にて公開され、展示飛行も行われた。
 しかしトラブルも多々あり…。まずインドネシアが納得しなかった。計画より撤退の報道も成されたほど。結局それは否定されたが、持ち株比率は約7%まで縮小。さらに今も開発費の一部が未払いとなっている。
 今回のADEXでは、初の機動飛行を実施。デモフライトを行ったのは単座機であった。だが、最終日単座機はトラブルのため飛行できず、複座機が代わりを務めた。

 

水平に飛行するKF-21。機体下部には、空対空ミサイル・AIM- 9やAIM-120、さらには空中発射型巡航ミサイル・KEPD350Kタウルスなどを吊り下げる

 

背中を見せるほどの派手な機動飛行を行うKF-21。こうしてみると、米空軍のF-22を意識した機体デザインとなっているように見受けられる

 

 韓国空軍、いや韓国の顏としてすっかり定着したのが、韓国空軍の曲技飛行チーム「ブラックイーグルス」だ。国産練習機T-50Bを8機使用し、さまざまな曲技を繰り出す。
 1953年に新編され、58年頃まで国軍の日などで編隊飛行を行っていた「特殊飛行部隊」がルーツとなる。62年に曲技飛行チーム「ブルーセイバー」を新編し、66年まで活動した。67年には「ブラックイーグルスチーム」が新編される。こちらはF-5戦闘機を使用した近代的なチームではあったが、こちらも常設ではなく、国軍の日など特別な日に曲技飛行を行う臨時チームだった。78年に活動を終了し、ここからしばらく曲技飛行チームが存在しない期間となる。
 94年に第298飛行大隊第2飛行隊を常設チームとした「ブラックイーグルス」が新編された。当時はA-37軽攻撃機を使用していた。99年に第239特殊飛行隊として独立。2008年よりT-50を配備し、09年から今の8機体制となる。

 

韓国空軍の曲技飛行チーム「ブラックイーグルス」で使用されるT-50練習機。同チームではこれまで、P-51戦闘機、T-33練習機、F-86戦闘機、F-5戦闘機、A-37軽攻撃機が使用されてきた

 

「ブラックイーグルス」は8機編成となっており、機数の多さを生かした演技はなかなかの大迫力。2012年7月1日、ワディントン国際航空ショーにおいてベスト・ディスプレイ賞を受賞するなど、世界の評価も高い

 

 T-50のセールスも兼ね、文字通り世界中を駆け巡る。その結果、認知度はかなりアップ。曲技飛行のレベルも向上し、ベスト・ディスプレイ賞など国際的な賞をいくつも受賞している。
 この他、ADEX2025で、ちょっとした話題となった機体があった。それが偵察機RF-16だ。韓国では、偵察機としてRF-4を配備していた。しかし韓国空軍からF-4ファントムが全機引退することになり、その中に偵察機型も含まれた。これにより偵察機がなくなる危機に瀕したため、F-16C/Dにカメラが内蔵された偵察ポッドを取り付けて代用することにした。
 いろいろと話題に事欠なかったADEX 2025。その他の展示機等は写真でご紹介していこう。

 

2024年より韓国陸軍へと配備された最新の軽攻撃ヘリコプターLAHミルオン。輸送能力も高く、民生型も生産されている

 

F-16C/Dにカメラが内蔵された偵察ポッドを取り付けたRF-16。RF-4の代わりとして運用される偵察機型F-16だ

 

韓国が独自に開発した初等練習機KT-1。あわせて攻撃機型も開発されており、インドネシア空軍で採用されている

 

 

Text & Photos:菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年1月号に掲載されたものです。

 

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