実銃

2026/08/15

500年企業、その現在の姿を知ろう「BERETTAの今」

 

 ベレッタ基礎知識 

BERETTAの今

500年企業、その現在の姿を知ろう

Satoshi Matsuo

 

Beretta Villa
ベレッタを象徴するのが、ガルドーネ・ヴァル・トロンピアの本社第一工場内に建つベレッタ ヴィラだ。ベレッタ アームズ コレクション展示室や本社機能、ベレッタ一族の住居となっている
Image Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 


 

 2026年はベレッタの1526年創業から500周年に当たるアニバーサリーイヤーだ。500年以上続く会社は世界的に見ても少なく、銃器メーカーとしては圧倒的に長い歴史を持つ。アメリカ最古の銃器メーカーはレミントンで1816年創業、ドイツでは1751年創業のザウアー&ゾーンが最古だといわれている (小規模経営を除く)。しかし、これら古くからあるメーカーは何度も経営母体が変わり、その名称こそ継承しているが実態は別会社だといえるものだ。
 しかし、ベレッタは違う。同じ一族が経営者として銃器製造事業を脈々と続けているファミリービジネスであり、外部資本が入ったことは一度もない。創業者バルトロメオ・ベレッタから数えて、現在の社長兼CEOであるFranco Gussalli Beretta (フランコ・グッサリ・ベレッタ)と、ベレッタホールディングの社長兼CEOのPietro Gussalli Beretta (ピエトロ・グッサリ・ベレッタ)は15代目に当たる。
 その長い歴史については本誌のGun Pro A.T.パートで解説する。また8月末に発売する予定のGuns & Shooting Vol.29では、この春におこなわれた500周年イベントを詳しく紹介する予定だ。
 ここでは、ベレッタが現在どのような企業として活動しているかについて述べてみたい。

 

これがBeretta Unoと呼ばれるベレッタ第一工場。最新鋭のCNCマシンや自動生産設備、冷間鍛造設備を揃え、ベレッタの主力製品のパーツやバレルなどを生産する主力工場だ。メッラ川を渡った位置に建つのは新しいイノベーションハブで、FEM解析、アドバンスドシミュレーションツールなどの高性能機器が並び、技術者同士のコラボレーションプラットフォームを用いて研究開発がおこなわれている。ここから約1km程度離れた場所にはBeretta Due(デュエ)と呼ばれる第二工場がある。こちらは熟練の銃工が手作業で銃を組み上げるPBセレクションの工場で、精緻な彫刻やプレミアムグレードのストック製作もこちらでおこなわれるメニューだ。また革張りの高級ガンケースの製造拠点や、オーダーメイドカスタムなどを受け付けるカスタマーセンターもここに併設されている。

Image Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 

M9がもたらした物

 

 ベレッタは、アームズ読者にとっては、アメリカ軍が採用していたM9、すなわち92FSのメーカーという認識がもっとも強いだろう。もちろん同社が優れたショットガンを製造供給していることも知っていても、やはりベレッタといえば92FSが思い浮かぶ。
 ベレッタは第二次大戦後にはイタリア最大の銃器メーカーとなり、かつショットガンの分野では高いポジションを獲得していた。しかし、イタリアに軸足を置いた状態であったことは否めない。しかし、同社の92SB-F(92F)がM9の座を勝ち取った頃から、世界屈指のメーカーに上り詰めていく。
 ピストル分野における大きな転機は1970年代にあった。それを推進したのは、14代目であるUgo Gussalli Beretta(ウーゴ・グッサリ・ベレッタ)で、彼はアメリカ市場を代理店経由ではなく、直接開拓していくことを決め、1977年にベレッタUSAを設立、活動を開始した。そのタイミングは、アメリカ軍がM1911A1の後継を模索し始める時期と概ねシンクロする。アメリカ空軍による新型ピストルの選定がおこなわれ、続いてその対象を全軍に拡大したJSSAP、さらにはXM9トライアルへと進んでいく中、ベレッタは1975年に発表したモデル92を、92S→92S1→92SB→92SB-Fと進化させていった。そして1985年1月14日、長い競争の末に見事アメリカ軍サービスピストルM9の座を勝ち取ることに成功する。
 実際は少し違うのだが、アメリカ軍のサービスピストルに選ばれること、それは “世界でもっとも優れたミリタリーピストル”であることの証明だという考え方がある。M9に選定されたことにより、銃器メーカーとしてのベレッタの名は世界中に広まった。そしてM9の民間市場、並びに法執行機関向けモデルである92F(1988年以降は92FS)は爆発的に売れていく。これによって得られたキャッシュフローを生かし、ベレッタは少しずつ銃器関連企業をその傘下に収め始めた。これはM9がもたらしたものだといえる。

 

上から14代目ウーゴ・グッサリ・ベレッタ、中段が現在のベレッタを率いる15代目ピエトロ・グッサリ・ベレッタ(向かって左)とフランコ・グッサリ・ベレッタ(右)、手前が16代目となるカルロ・グッサリ・ベレッタ (2023年撮影)

 

現在のベレッタを形作る原動力となった製品がベレッタ92FSだ。90シリーズは様々な形に進化している。これは現在のバリエーションのひとつである92XI SAO X-treme S シングルアクショントリガー、オプティックレディ、フレームマウンテッドアンビセーフティ、9×19mmの18連マガジンなどが特長だ。

Images Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 

Beretta Uno内を走るマッテオッティ通り(SP345号線)と道路上を横断する工場連絡通路
Photo:Satoshi Matsuo

 

ベレッタが辿った500年間に作られた銃器の数々を展示するベレッタ アームズコレクション

Image Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 

グローバルリーダーへ

 

 同じイタリアのショットガンメーカーであるBenelli(ベネリ)の株式33%を取得し、実質的な支配権を持ったのは1983年のことだ。そしてベネリを子会社化した。同様にイタリアのショットガンメーカーであるFranchi(フランキ)を買収したのが1996年。フィンランドのライフル・弾薬メーカーSAKO(サコー)は1999年に買収している。これらを主導していったのは1995年に設立されたベレッタホールディングだ。
 2000年にはクラシックガンのレプリカを製造するUberti(ウベルティ)を買収、同じ2000年に銃器販売事業を展開するStoeger(ストーガー)、2002年にトルコのショットガンメーカーVersan(ヴァルサン)を買収し、その社名をヴァルサンからストーガーに変えた。2002年にはアメリカの光学機器メーカーであるBurris(バリス)を買収している。
 2008年にドイツの光学機器メーカーSteiner(シュタイナー)Optikを買収、2021年にロンドンのガンメーカーであるHoland&Holand(ホーランド&ホーランド)を買収している。そして2022年にスイスの高品質弾薬メーカーRUAG Ammotecを買収して複数の事業体(RWS、Geco、Norma、Swiss P Defence等)に分社化して傘下に収めた。
 現在、ベレッタホールディングは世界の50を超える企業を子会社化し、事業を展開している。これらはすべてハンティング、射撃スポーツ、そして軍並びに法執行機関向けの事業だ。生産拠点は世界中に広がり、保有するブランドは20を超える。
 そして今、ベレッタが取得しようとしているのは、アメリカのSturm Ruger(スタームルガー)で、既にルガーの9.95%の株式を取得、筆頭株主となった。さらにプラス20%の株式取得を目指している。今後、ルガーの経営権を巡って現在のルガー経営陣との攻防が展開されるだろう。
 ベレッタは単に自社ブランドの優れた銃器を生産供給するメーカーに留まるのではなく、ベレッタホールディングを通じて、数多くのメーカーを傘下に置く巨大なグループを形成しようとしている。これによってベレッタホールディングは、銃器、光学機器、弾薬、衣料品、その他関連アクセサリー、そのすべてを網羅し、ユーザーに向けて提供することができるようになるのだ。高機能なハイエンド製品もあれば、普及価格帯の製品もある。ここでいうユーザーとは、ハンターであり、射撃スポーツを楽しむシューター、自己防衛をおこなう個人、コレクターなどの一般顧客、そして法執行機関と軍事組織だ。一社だけでこれを実行することは途轍もなく困難だが、多くの企業が繋がればこれを実現できる。ベレッタホールディングは銃器業界におけるグローバルリーダーとなることを目指しているのだ。
 その中でも、法執行機関や軍に特化してビジネスを展開しているのが、BDT (Beretta Defense Technologies)だ。銃器の分野ではベレッタ、ベネリ、サコー、光学機器のシュタイナー、弾薬はRWS、スイスP、ノルマ、MFS、そしてスタングレネードなどの火工品を扱うCentanex (センタネックス)がBDTを形成し、顧客のニーズに合った製品提供をおこなっている。

 

2023年9月にロンドンで開催されたDSEIで発表されたベレッタの新しいアサルトライフルNARP。
2025年、イタリア軍は既存のベレッタARX160の後継としてNARPの採用を決め、2026年3月までに最初の7,000挺が納入、運用が始まっている。
現在のNARPは5.56×45mmだが、7.62×51mm仕様の開発も進行中で、こちらはARX200の後継機となる予定だ。
全長:806mm-888mm
重量:3.3㎏
(以上は14.5インチバレル仕様の場合)
バレル長:11.5”, 14.5”, 16”
作動方式:ショートストロークガスピストン2ポジションガスシステム
外観はM4スタイルに近いが、フォールディングストックへの対応も可能で、内部構造はM4とは異なる。

Images Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 

ショットガンカテゴリー

 

 ベレッタは、ピストル、アサルトライフル、サブマシンガンを製造供給するメーカーとしてだけではなく、もう一つ、優れたショットガンを製造するメーカーとしての顔を持っている。20世紀前半にはクラフトマンシップに満ちたショットガンを製造し、すでに高く評価されていたが、第二次大戦以降もその分野に注力した。そしてベレッタは国際射撃競技の世界で大きく躍進し、現在ではトップポジションに上り詰めている。
 クレー射撃競技で主流なのは、上下二連銃だ。ベレッタは1933年、サイドロックの上下二連銃SOを完成させた。しかし、SO1が本格的に量産されたのは第二次大戦後の1940年代後半からだ。それから約10年後の1956年、ベレッタショットガンは初めてオリンピックのトラップ競技で金メダルを獲得する。使用された銃はSO3EELLで、これ以後、ベレッタは競技シューターに向けて幅広いサポートをおこなうようになった。特にオリンピックやワールドチャンピオンシップに出場する多くの有力選手をスポンサードしている。その結果、1972年のミュンヘン オリンピック以降、ベレッタショットガンは全てのオリンピック大会でメダルを獲得し続けるようになった。最初はイタリア人選手のみであったが、1984年からは外国人選手にも広がり、現在では世界中の選手がベレッタショットガンを使用している。
 この分野でも突出した製品であるDT11が発表されたのが2011年だ。それまでもっとも優れたショットガンバレル鋼材はボーラ鋼 (ボーラ アンチニットスチール:Boehler Antinitsteel:オーストリアの鋼材メーカーvoestalpine BÖHLER Edelstahlが製造する特殊鋼材のひとつ)だとされてきた。これに対しベレッタは、ニッケル、クローム、モリブデンの三元素による合金鋼の冷間鍛造バレルを開発し、新しいDT11に採用した。その名称がSteelium(スティーリアム)で、ベレッタはボーラ鋼に勝る銃身鋼材と位置付けた。併せて新規設計ロングフォーシングコーンの組み合わせをスティーリアムProと名付けている。
 DT11の射撃フィーリングは、ボーラ鋼を用いたショットガンに勝るものだった。これ以降、DT11の快進撃が始まって現在に至る。ベレッタショットガンのオリンピックにおけるメダル獲得数と獲得比率は2012年以降増加し続け、特に2024年のパリオリンピックでは、15個のメダルの内、ベレッタショットガンを使う選手が14個を獲得した。

 

 またベレッタは、様々なスティーリアムバレルバリエーションを開発し、上下二連以外のベレッタショットガンにも搭載してきた。これがベレッタショットガン全体のポテンシャルを向上させる原動力にもなっている。
 2024年にリリースされた新しいSL2は、更なる進化と改良を加えたスティーリアムPro Xバレルを装着した。これはスティーリアムProの進化版だ。ロングフォーシングコーンと長い90mm OCXPチョークを採用し、ターミナルエナジー(散弾がターゲットに到達した時に持っている運動エネルギー)の向上、リコイルの低減、パターンの安定性向上を実現している。おそらくSL2は2028年のロスオリンピックで大きな結果を出すだろう。
 タクティカルショットガンの分野でもベレッタは製品開発を活発におこなっている。グループ会社であるベネリのM2, M4と競合するモデルであるが、それぞれの会社は企業として独自性を持っており、互いにベストな製品を展開しているのだ。ベレッタ1301シリーズは、既存のスポーツモデルであるA400をベースに、タクティカルならびに競技用としての操作性を突き詰めたモデルとなっている。

 

 ベレッタショットガンを使う選手が1956年以降、オリンピックでメダルを獲得した比率は以下の通りだ。(獲得個数ではなく比率にしているのは、大会により実施されるクレー射撃競技の数が異なるため、比率にしないと比較ができないため)
1956年メルボルン33%、1960年ローマ33%、1964年東京0%、1968年メキシコシティ0%、1972年ミュンヘン33%、1976年モントリオール17%、1980年モスクワ17%、1984年ロサンゼルス50%、1988年ソウル17%、1992年バルセロナ50%、1996年アトランタ58%、2000年シドニー33%、2004年アテネ33%、2008年北京20%、2012年ロンドン27%、2016年リオ67%、2020(2021)年東京60%、2024年パリ93%

 

Beretta SL2
2024年に発表された新しい上下2連銃で、競技用として最新の技術で開発されたと同時に、P.B.セレクションのカテゴリーにも属するラグジュアリーさも併せ持つ製品だ。

 

Beretta 1301 タクティカル
A400をベースに開発されたタクティカル、及びコンペティションモデルが1301だ。写真の独立型ピストルグリップ仕様の他、スタンダードストック仕様やフォールディングストック仕様がある。

 

Beretta SL3 Dante
イタリア文学最高の古典とされる長編叙事詩『神曲』で有名なダンテ・アリギエーリの名を冠したSL3 EELL。『神曲』からインスパイアされた精緻な彫刻が施されている。P.B.セレクションに属する作品のひとつだ。

 

Images Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 

P.B. セレクション

 

 ベレッタには、芸術的価値を持った贅沢な銃器を製造する“P.B.セレクション”(Pietro Beretta Selection)と呼ばれる部門がある。ここでは、イタリアの銃器製造技術を極限まで突き詰めた逸品を職人が手作業で作り上げているのだ。銃器を単なる道具と捉えるのではなく、所有することに喜びと満足感を満たせる存在に仕上げていく。当然ここでは顧客一人一人の要望を満たすため、綿密な打ち合わせを重ねた上で作業に取り掛かる。
 現在も英国にはロンドンガンと呼ばれる高級なハンドメイドの銃を作る小規模なガンマニュファクチャーが存在するが、長い歴史を持つベレッタもまたそのような銃を作り出す技術を継承しているのだ。ベレッタは最新のNCマシンで銃を量産する一方で、伝統の技術と職人技も絶やさぬ努力を続けている。
 ベレッタは、持ち株会社(ホールディングカンパニー)という形で、多くのメーカーを束ねて幅広い製品を展開し、銃器業界のグローバルリーダーを目指している。構成する子会社は独自性を維持し、それぞれがベストを尽くした製品を市場に送り出すことに余念がない。
 その中核に立つベレッタは500年の歴史を誇りつつ、立ち止まることなく進化し続けている。最新の軍用アサルトライフルやポリマーレシーバーのショットガン、ストライカーファイアードピストルなど最新鋭の製品を製造供給し、競技用ショットガンの分野では頂点に立った。その一方で、伝統的な手法を駆使し、感性を刺激するラグジュアリーガンまでをも網羅している。それが現在のFabbrica d’armi Pietro Beretta(ファブリカ・ダルミ・ピエトロ・ベレッタ)なのだ。

 

 

TEXT:Satoshi Matsuo

Image Courtesy of Fabbrica d’armi Pietro Beretta

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年7月号に掲載されたものです。

 

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