2026/05/20
M29最初期型ノーダッシュ、コークボトルグリップ付き初のモデルガン化「タナカ S&W M29 No Dash 4スクリュー6-1/2インチヘビーウエイト」
M29最初期型ノーダッシュ、コークボトルグリップ付き
初のモデルガン化
初期型44マグナム
タナカからM29ノーダッシュが発売される。まずはこの“ノーダッシュ”とは何かについて、実銃のモデル29の解説をさせて頂きたい。
S&Wのスイングアウト、ハンドエジェクターリボルバーの3つ目のバリエーションとして、Nフレームが登場したのは1908年の事だ。Iフレーム、Kフレームに続く当時としては最大サイズのフレームで、.44口径や.45口径といった大口径弾薬を使用することを想定したものであった。最初のモデルは44ラッシャンと新しい44スペシャルカートリッジに対応するS&W 44ハンドエジェクターで、バレル下部にはエジェクターロッドシュラウドが付いていた。これには “トリプルロック”と呼ばれる三重のシリンダーロッキング機構が組み込まれたが、必ずしも必要なものではなく、コストアップに繋がるため、その後すぐにトリプルロックは省略されている。
1930年代になると、44スペシャル弾をベースに発射火薬を増量、重い弾頭と組み合わせたホットロード弾をハンドロードして楽しむ人達が現れるようになった。その中で突出した人物がエルマー・キース(Elmer Keith:1899-1984)で、彼は牧場主兼ハンティングガイドであり、銃器雑誌に記事を寄稿する銃器愛好家だ。その生涯で何冊も本を執筆している。第二次大戦中は中断せざるを得なかったが、戦後にこの.44口径ホットロード弾の研究を再開、そしてじゅうぶんなデータが揃った1953年、キースはレミントンの弾薬部門に、.44口径マグナム弾の製品化を提案した。この新しいカートリッジは既存の44スペシャルよりケース(薬莢)長を0.125インチ(3.175mm)延長したもので、後の44マグナムの原型となっている。実際には長くしなくても、ホットロード弾は作れるのだが、安全性を確保するために長くした。
レミントンはこのキースの提案に賛同し、この新型カートリッジ“44マグナム”の製品化を決め、これを使用する専用リボルバーの開発をS&Wのカール・ヘルストロム社長に要請した。
これを受けて、S&Wは1954年7月、44スペシャルハンドエジェクター モデルオブ1950をベースに、シリンダーの長さを0.125インチ伸ばすと共に、熱処理を変更して強度を高めた試作モデルを4挺完成させている。
テストの結果、いくつかの改良すべき項目が見つかり、設計変更がおこなわれた。そして1955年末に44マグナムリボルバーが完成した。
1956年に製品化された銃の名称はそのものズバリのS&W 44 Magnumで、当初これは5スクリューだった。サイドプレートを留めるネジが4本、そしてトリガーガード前部にシリンダーストップスプリングを装着するスクリューが1本あったので5スクリューとなる。しかし、1956年の内にサイドプレートが3本で留められるようになり、4スクリューに切り替わった。
1957年6月12日にS&Wはモデルナンバー制をスタートさせ、その結果、44マグナムはModel 29という製品名になっている。これ以降、S&Wはそれぞれのモデルに改良を加えるとモデルナンバーの後にダッシュ(-)を付け、1から順番に数字を振るようになった。
モデル29の最初の改良は1960年におこなわれている。エジェクターロッドはそれまで正ネジでシリンダーに装着されていたが、S&Wダブルアクションリボルバーの場合、シリンダーの回転方向が左回りであり、エジェクターロッド先端を保持するボルトとのフリクションからロッドが緩み、シリンダーをスイングアウトしづらくなる不具合が稀にあった。そこでS&Wはこのロッドを逆ネジで固定するように改良した。これなら緩む心配はない。この改良を施したモデル29は“29-1”(トゥエニーナイン ダッシュ ワン)だ。
翌1961年、トリガーガード前部にあったシリンダーストップスプリングを装着するスクリューがなくなった。これが“29-2”で、その番号が1982年まで約21年続く。一般的にモデル29といえば、この29-2がイメージされる。ちなみにこのダッシュナンバーだが、改良が加えられるたびに新しいナンバーが振られるとは限らず、同じナンバーが継続される場合もあって、29-2といっても途中で仕様変更があった。
いずれにしても今回、タナカがモデルガン化するM29ノーダッシュは、1957年6月以降、1960年に29-1が登場するまでの間に製造供給されたダッシュナンバーのないモデル29に相当する。だから“ノーダッシュ”なのだ。但し、今回のモデルガンのベースとなったのは、普通のノーダッシュではない。これについては後述する。
コークボトルグリップ
1956年に発売され、29のモデルナンバーを振られる前の44マグナムは、分類上、Pre-29(プレ29)と呼ばれる。そして1957年にモデル29ノーダッシュが登場、1960年からの1961年にかけてはモデル29-1が生産されたが、これらはいずれも生産期間が短く、かつそれほど人気があったわけではないため、生産数が少ない。強力な44マグナムを撃つリボルバーの人気が爆発したのは、1971年末に全米公開された映画『ダーティハリー』(Dirty Harry)以降のことだ。
したがって、プレ29、29ノーダッシュ、29-1はどれもコレクターアイテムに相当する。そしてこの時代のNフレームリボルバーには、通称“Coke Bottle Grip”と呼ばれるオーバーサイズターゲットグリップが装着されている場合が多かった。
オーバーサイズターゲットグリップは1950年代半ばに製造が始まったもので、それ以前はスクエアバットのフレームと同サイズのグリップが標準であった。それに対し、射撃しやすさと高級感を演出する意味で、このオーバーサイズターゲットグリップが作られるようになったらしい。かなりの大型グリップだが、握り易さを得るためにグリップの側面が部分的に少しくびれた形状に加工されている。よく見ないとわからない程度のくびれだが、その形状から後の時代にこれは“コークボトルグリップ”(CBG)と呼ばれるようになった。コカ・コーラ(コーク)のくびれたボトルは1915年にデザインされたもので、当時はhobble skirt contour bottleと呼ばれ、パテントも取得されている。今では瓶入りコカ・コーラは少なくなったが、秀逸なデザインで、印象深い。このボトルに似たくびれがあるため、コークボトルグリップという。
S&Wのコークボトルグリップは、1960年代半ば頃まで、NフレームとKフレームリボルバーの一部に装着されていたが、その後は生産工程を簡略化させるため、くびれのないフラットな側面を持つ新しいオーバーサイズターゲットグリップに切り替わった。
作られなくなってしまったこのコークボトルグリップも、今では入手困難でコレクターアイテムとなり、もし売られていてもかなりの高額となっている。その材質はウォルナットか、ローズウッドで、末期にはゴンサロアルベスでも作られたようだ。
タナカは今回、M29ノーダッシュ用にウォルナット材でこのコークボトルグリップも正確に再現、これを標準装備としている。
タナカのM29ノーダッシュ
今回製品化されるのは、1957年から1960年までの期間に作られたモデル29ノーダッシュのモデルガン化なのだが、すでに書いた通り、厳密には少し異なる。タナカはノーマルのモデル29ノーダッシュではなく、NRA(全米ライフル協会)ミュージアム所蔵の映画『ダーティハリー』モデルをベースに再現した。
1971年末に公開されたこの映画は、44マグナムリボルバーの人気を爆発的に高め、さらにはマグナムブームに火をつけた作品だが、この映画の制作段階ではモデル29は全く人気がなく、ハリウッド、ならびに舞台となったサンフランシスコ周辺のガンショップでは入手ができなかったといわれている。
開発に関わったエルマー・キースのようなハイパワーリボルバー愛好家は当時、全米でも数が少なく、44マグナムの需要は限定的であった。1発撃つとマズルが真上に向いてしまうような強烈なリコイルは快適とは言い難いし、ピストルによるハンティングも獲物に近距離まで接近する必要があってかなり難しい。マグナムハンドガンを使うメタリックシルエットピストル競技が始まったのも1970年代になってからだ。したがって需要が少なかった。
結局、映画のスタッフがS&Wにコンタクトをとって映画製作用にモデル29を組み立てて貰ったらしいが、時代的に当然それは29-2であったはずだ。しかし、NRAミュージアムにあるのは29ノーダッシュで、これは映画『ダーティハリー』とその続編『ダーティハリー2』(Magnum Force:1973)の脚本を担当したジョン・ミリアス(John Milius:1作目にはなぜかクレジットに名前がない)に対し、映画を制作したワーナーブラザースと主演のクリント・イーストウッドが感謝を込めてプレゼントしたものだとされており、実際グリップにある金属プレートにはその事が記されている。
Photo by Yasunari Akita
このモデル29は実際に撮影に使われた中の1挺だとされているが、映画用にS&Wが組み立てたのが事実なら、ノーダッシュのはずはないし、それは当時も既にレアものだった。従ってノーダッシュを撮影に使ったという説は、ちょっと腑に落ちない。
ミュージアムにあるこの29はフロントサイトにレッドランプインサートが入っている。モデル29にこのインサートが入るのは29-2になってからで、映画に登場するモデル29もレッドインサート付きだ。しかし、この加工は29-2が登場する以前からガンスミスワークとしてもおこなわれていたもので、ノーダッシュや29-1に追加工したものがけっこうあったらしい。
映画撮影にこの29ノーダッシュが実際に使われたかどうはかわからないが、映画に関連するアイテムであることは間違いない。
タナカのM29ノーダッシュは、このNRAミュージアム所蔵の29ノーダッシュをシリアルナンバーも含めて再現し、グリップを1960年代半ばまで使われていたコークボトルグリップとした。銃本体の刻印や4スクリューの再現など、モデルガンとしての“こだわり”を強く感じる。このコークボトルグリップだけでもかなり価値があるだろう。モデルガンのM29ならすでに持っているというユーザーも含めて、これはどうしても購入したくなる逸品だ。
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タナカ
S&W M29 No Dash 4スクリュー6-1/2インチヘビーウエイト
DATA
- 全長:306mm
- 銃身長:6.5インチ
- 重量:約945g(カート込)
- 装弾数:6発
- 主要材質:HW樹脂+亜鉛ダイキャスト+ウォルナット
- 付属品:357マグナム発火カートリッジ6発
- 仕様:7mmキャップ火薬発火式モデルガン
- 価格:¥54,780( 2026年5月中旬発売予定)
- お問い合わせ先:タナカ
※記事中の価格表記は掲載時点でのものであり、特に記載のない限り税込みです。また、物価や製造コストの上昇、為替レートの変動により記事中に記載の仕様、価格は予告なく変更される場合があります。あらかじめご了承ください。
TEXT:Satoshi Matsuo/アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2026年6月号に掲載されたものです。
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