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2026/03/02

越後三条で唯一無二の“ナイフ’'を生み出す作家【ナイフダイジェスト・アームズマガジン版】

 

 人類最古の道具とも言われる刃物。その中でも、実用性と収集性が並び立つアイテムである「ナイフ」にフォーカスして、最新情報をお届けしよう

 

 

TOPIC

 

ものづくりのまち、三条のナイフ作家・五十嵐 護(ZERO鍛冶)

 

 新潟県三条市は、江戸時代の和釘づくりにはじまる鍛造刃物や利器工具類、アウトドア用品などの産地として全国有数の金物産業都市。「金物のまち」「ものづくりのまち」として知られる三条には、見どころも数多くある。前回の「三条鍛冶道場」に続き、この地で活躍するナイフ作家をご紹介しよう。

 

「Yoroidoshi」と「56 fifty six」。米国のスペシャルユニットから依頼されたモデル

 

 

越後三条で唯一無二の“ナイフ’'を生み出す作家

 

「8歳ぐらいから鍛冶屋になろうって決めていました」

 

 刃物作家「ZERO鍛冶」こと五十嵐 護さんはそう語る。


 ZERO鍛冶の名前はナイフファンの間ではよく知られている。
 石器ナイフや伝統的な鍛造刃物をモチーフにしながらオリジナリティのある
デザイン、そして圧倒的な切れ味の良さ。積極的に各地のナイフショーに出展しで多くのファンの目に触れるゆえだろうか、日を追うごとに作品の洗練度は増していく。進境著しい作家であり、新作を目にするのがひときわ楽しみな存在である。


 その腕を見込まれて、アメリカの法執行機関やスペシャルフォースからのオーダーも受けるなど、世界的に活躍をし始めてもいる。
 そんな五十嵐さんは刃物産地として知られる三条で生まれ育ち、子どもの頃から刃物作家になることを志していた。


「学校の自由研究で黒曜石のナイフを作ったんです。完成したんですが、ふとした拍子に落として割れてしまった。金属製だったら頑丈な刃物がつくれるだろう。つくりたいと思ったんです」
 それからは30代で独立するまで、ずっと刃物作家になるために行動してきた。


「近所に刃物鍛冶のエ房や町工場があったので、見学しに行きました。誰もが親切に教えてくれたりしたのがありがたかったですね。図書館にも通って文献も調べました」
 まだインターネットが発達していない時代だけに、どれも手探りだったが楽しかったという五十嵐さん。高校卒業後「機械工具などを買うための資金を貯めるために」企業に就職した。その後、満を持して刃物鍛冶のもとで技術を学び始めるが、体調を崩してリタイアすることとなってしまう。

 

「金属アレルギーを発症してしまったんです。今は、仕事のペース配分などに気を配ることで発症を抑えていますが、当時はどうしようもなかった」
 普通ならば鍛冶屋になるのを諦めるところだが、五十嵐さんは違った。紹介もあって、燕市にある医療器具の製造会社に就職し、金属製品の「仕上げ加工」を身につけた。刃物づくりも独自に続けていた。ZERO鍛冶のトレードマークとも言えるブレードに石器ナイフをモチーフとした波刃をつけた「ファンタジーセレーション」にたどり蒲いたのは、20代の頃だったという。

 

「ようやく、自分らしいものができた、という心持ちでした。これで刃物作家となるきっかけができた、と」
 独立を果たしたのは30代中盤。鍛造から熱処理まで含めた刃物づくりと、仕上げ加工。刃物づくりに必要な技術をひと通り身につけ、自身のデザインの核も掴んだ上での独立だけに、当初から数多くの注文を受けることとなり、人気作家の仲間入りを果たした。

 

「誰が見ても『ZERO鍛冶の製品だ』と分かるような個性を持ったものづくりを続けていきたいです」と語る五十嵐さん。先日、海外で拳銃の弾を受け止める防弾テストを行い、見事に「成功」を収めた。


「切れ味と丈夫さ。それらを兼ね備えた刃物づくりをこれからも続けていきたいです」
 諦めずに30年越しの夢を叶えてナイフ作家となった五十嵐さんの作り出す刃物。これからも目が離せない。

 

石器ナイフをモチーフにしたブレード「ファンタジーセレーション」

 

「誰が見ても『ZERO鍛冶』とわかる」ものづくりをしたい、と語る

 

拳銃の弾を受け止める防弾テストを行い見事に「成功」を収めた。このテストの主催者であり、五十嵐さんの作品による「MONONOFU」ブランドを立ち上げたUSPD GEAR(uspd.ocnk.net / X : @chpmania)についても近日中にこ紹介したい。

 

会津地方の伝統的な木工用刃物「サルキリ」をモチーフにした刃物

 

仕事場には鍛冶場が設けられる。火床(ほど)は椅子に座った状態で作業ができるようにエ夫されている

 

整頓された仕事場。数多くのオーダーをこなすかたわら、新しいデザインのナイフにも意欲的に取り組む

 

 

 五十嵐 護(ZERO鍛冶)

 新潟県三条市在住の刃物作家。鍛冶から熱処理、仕上げに至るまで自身で行なうことで生み出す切れ味の良さと丈夫さを両立させた刃物は、国内外のナイフファンからプロフェショナルまで幅広い支持を受けている。

 

X:@hernia_story2

 

 

さらに詳しいインタビューはこちらでご覧いただけます

 

 

SPECIAL CONTENTS

 

気鋭作家×HOBBY JAPAN コラボレーションナイフ企画

 作家紹介その2  市川志郎 I川商店

 

「気鋭作家×HOBBY J APANコラボレーションナイフ企画」各作家にクローズアップした記事を掲載していきたい。近日開始(3月予定)の商品予約受付開始までの間、ナイフと作家へのご理解を深めていただければればと思う。

 

市川志郎さん。千葉県にある工房で制作する傍らナイフショーにも積極的に参加する

 

「ここまでのすべてがナイフメイキングに繋がっているんです」

 

「ナイフをつくりだしたのは2020年からですが、子どもの頃から外で遊ぶのが好きで、刃物は身近にある存在でした」

 

 市川志郎さんの人気は、カスタムナイフ界の中でもひときわ目を引く。ショーでは常に完売。多数のリピーターがいるが、新規のカスタマーも彼の作品を手に取って吟味している。ショーごとに新作や意欲作を並べているが、いずれも一定以上のデザインクオリティを保ちながら、ひと目で「l川商店」と分かる個性を持っている。そこに人気の理由が潜んでいるのだろう。

 そんな市川さんは、冒頭の言葉どおりナイフを作り出してまだ5年足らず。新人と言っても良いほどのキャリアだが、小さな頃からアウトドアに親しんできた彼にとって、まさしく刃物は身近にある存在だった。

 

「ナイフそのものに興味を持ったきっかけは映画です。『ランボー』や、トミー・リー・ジョーンズとベニチオ・デル・トロが共演したナイフ格闘アクション映画『ハンテッド』を観て熱くなりました。高校生の時にはお金を貯めてマイクロテックを手に入れたりしていました」

 当時好きだったのは、マイクロテックの他にストライダーやグレッグ・ライトフットなど。実用を第一義としながらも、独特の「色気」に多くのファンが魅力された作品の数々だった。

 

 そんな市川さんは、成人してからはハンティングを始めるように。山に入って数日間過ごすスタイルを好んだので、必然的に道具を厳選する必要があった。その際に気になったのがナイフだった。

 

「理想は、それ1本で獲物の止め刺しやスキニングからユーティリティ的な用途にも使えるナイフ。なかなかこれは、と思える1本に出会えなかったので『だったら、自分でつくろう』と思ったんです」
 世界がコロナ禍に見舞われていた時期でもあった。外出もままならない状況が、ますますナイフ制作へと向かわせた。

 

信頼できる仲間たちとも協議しながらデザインを固めて制作。「実用」を第一にしたコンセプトはブレることなく、汎用性の高いモデルにまとめ上げた


「参考にしたのは、ナイフメイキングについて書かれた本がメイン。デザインや削りといったものも独学で身につけていきました」

 面と面が複雑に絡む立体的なデザインと精緻な仕上げの作品を見ると、独学という言葉もにわかには信じ難い。「デザインに関しては、航空工学などで学んだことも役立てることができたように思います」

 

 市川さんの小さな頃からの夢のひとつが「空を飛ぶこと」。ご存じの方も多いだろうが、本業はパイロット。初志を貫徹した結果である。そこまでの過程でふたつの大学で専門的な学問を納めている。流体力学などに則った「理にかなったデザイン」は、どのようなものか、どのような思考プロセスで生まれるかといった感覚、さらには「PDCA (分析・計画・実行・改善のサイクルを繰り返すことで、成果を最大化する技法)」などものづくりの思考といった「基礎」を身につけることも役立っているという。

 

「ナイフづくりには、ここまでの経験がすべて繋がっています。その過程で多くの人たちに助けてもらってもきています」 そう語る市川さん。つくるナイフは「ハンティングに使える1本を」とつくり始めた当初から一貫して「実用」を意識してきている。

 

「今回のモデルは、ナイフのライトユーザーにも親しんでいただけるような『ユーティリティ性』をテーマにしました。もちろん、タフなユーザーにも自信を持って使っていただけるような実用性も追求しています。他のモデルでも同じプロセスを取るのですが、今回も、さまざまなナイフを使う分野のプロフェッショナルの仲間たちとの協議を繰り返しました。その結果『ちょうど使いやすい』モデルになったと自負しています」

 

 市川さんの言葉通り今回の「Core Breach」は、初めてナイフを手にする人からヘヴィーユーザーまで安心して使えるユーティリティモデル。
 実用性を追求した結果たどり篇いたタントーブレード。市川さんの特徴のひとつでもある直線的なシルエットを、汎用性をより重視したデザインにアレンジした結果、メインエッジと切先が緩やかな曲線で繋がるシルエットとなった。どこか日本刀を連想させるデザインは、面と面が重なる市川さんらしいデザインと精緻な仕上げも相まって「持つ楽しみ」も味合わさせてくれるマスターピースとなった。

 

「ナイフがあることで広がる楽しさを感じていただければと願ってつくりました。ぜひ多くの方に手に取っていただきたいです」

 市川さんはそう語る。

 

Care Breach

全長:270mm
ブレード長:135mm
ブレード厚:5mm
ブレード材:MAGNACUT
ハンドル材:ドライカーボン

 

5mm厚のブレードバックにはシリアルナンバーが入る。ブレードバックとタング部のセレーションの入れ方の違いなどを見るだけで時間が過ぎていく

 

ブレード材にはマグナカットを採用。使う鋼材は実際の使用感を確かめてから採用する

 

バリエーション農かな作品群。昨年米ブレードショーにて憧れの作家たちに作品を批評してもらい好評を得たことが大きな自信になっていると語る

 

 

市川さんのさらに詳しいインタビューは以下をご覧ください

 

 

REPORT

 

東京フォールディングナイフショー

 

 

 2026年の2月7日(土)、東京駅そばにある「日本橋プラザビル」にて東京フォールディングナイフショーが開催された。世界でも珍しい折りたたみナイフ専門の同ショー。今回も28のブースに力作が並び、来場者を楽しませた。

 

JR東京駅八重洲口からすぐのロケーションが人気

 

恒例の抽選会も盛り上がった

 

列左から:市川雷也/山本徹/藤田貢大/米山勝利/岡島健二下列左から:横尾貴志/古藤好視/丹後雄一郎/松崎猛/浜田智成

 

 

詳細レポートは

こちらでご覧いただけます

 

 

銀座ブレードショー 2026春

 

 

 2026年の2月8日(日)には、東京・銀座の「時事通信ホール」にて銀座ブレードショー2026春が開催された。プロからアマチュア、ナイフから包丁まで幅広いジャンルの作品が並ぶ勢いのあるショー、終日大勢の来場者で賑わった。

 

雪の降る中で開催されたが来場者は多かった

 

人気のKIKU KNIVESのブース

 

上列左から:堀英也/武市広樹/奈良定守/山崎英雄/市川志郎下列左から:多松国彦/丸山律/杉山義雄/長谷川新一/長田渓

 

 

詳細レポートは

こちらでご覧いただけます

 

 

ホビージャパンがブース出展します!!

●「オールニッポンナイフショー」

●2026年3月7日(土)、8日(日)

●会場:KIITOホール1階大展示場(兵庫県神戸市中央区小野浜町1-4)

●URL:http://waigaya.g1.xrea.com/

 

 

Column

 

“ROBSON Trinity”ができるまで

櫻井哲平(モキナイフ)インタビュー

 

ROBSON Trinity(限定モデル)
全長:280mm ブレード長:150mm ブレード厚:5mm 重量295g
ブレード材:VG-10W ハンドル材:グリーンジュートマイカルタ
付属:グリーンレザーシース 値段:¥45,100(税込)

 

 HOBBY JAPAN が手を組んで送り出す三位一体のコラボナイフ“ROBSON Trinity”。そのモデルを作り出したモキナイフの櫻井哲平さんに、今回のモデルそしてモキナイフのオリジナルブランドに込めた思いを語ってもらった。

 

 

 モキナイフのイメージは元々、ポケットナイフのコレクションモデルが中心だったと思います。先代たちが、そういったイメージを作り上げたわけで、私もそれを引き継いてきました。ですが「ナイフは道具」という原点にも立ち返りたい、と考えたんです。アウトドアなどである程度タフに使えるようなモデルも打ち出していこうと。
 そんなコンセプトで作ったシリーズが「バーグ」です。ブレード長110mmのバーグ、85mmのバーグ・プロトレイル、150mmのバーグ・ロブソン。それぞれハンドル材などのバリエーションがいくつかあります。いずれもバトニングをはじめとしたブッシュクラフトから、ハンティングにまで幅広く使える「アウトドアナイフ」。さまざまなプロフェッショナルの方々からもアドバイスをいただきながら「ちゃんと使える道具」であることをアピールしました。
 それまでのモキナイフのイメージと大きく異なるから不安もありました。でも、ありがたいことにここまで好評をいただいています。

 

 今回の「ROBSON Trinity」はロブソンをベースにしています。バーグシリーズの中で最大サイズの「ロブソン」には、ハンティングをはじめとしたアウトドアでタフに使うという用途があります。だからこそ、オリジナルの「バーグ」をそのまま大きくするようなデザインには絶対にしたくありませんでした。ちょっとしたところで全体の印象が大きく変わる。先代たちの努力で、デザインを評価いただいてきたので、その伝統を守れるように、ということを意識しました。デザインにも気を配っていますが、私たちモキナイフの最も大きな強みは「アレンジカ」だと思います。
 手作業が多いので、ちょっとした変更がきくんです。だから、使い手の方々の声を聞きながらアップデートすることもできるんです。また、さまざまなファクトリーのOEM生産を請け負ったことによる知見も積み重ねています。最も良い技法やデザインを、数多くある「引き出し」の中から選ぶことができると自負しています。

 

 例えば、今回のモデルのコンベックスグラインド。最適なブレードにするために削りにはひときわ神経を使いました。もちろん加工は手作業。高い技術を持った従業員たちが削ってくれました。正直、OEMで数多くの難しいオーダーをこなして、その技術を社内で共有してきたからこそできるブレードだと思います。
 だからこそ、前々号で登場してもらった五十川英明さんのようなプロのハンターが使ってどのような評価が来るかは気になっていました。幸い、上々の評価だったのでほっとしていますし、ますます皆さんに使っていただきたい、という思いになっています。

 

 ROBSON Trinityは、ハンドル材に美しいグリーンジュートマイカルタを採用し、シースも深緑にしています。日本の四季豊かな自然の中でひときわ映える色合いです。皆さんのアウトドアライフの良きお供になると確信しています。

 

 

モキナイフの代表取締 櫻井哲平さん。(写真:加藤晋平)

 

 

詳細レポートは

こちらでご覧いただけます

 

ホビージャパン

HOBBY THE PEOPLE

 

 

構成:服部夏生(刃物専門編集者)

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年4月号に掲載されたものです。

 

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