ガンベルトの話 早撃ち用編
SAAとガンベルトはセット物
世界で最も遊んで楽しい銃、それはコルト シングルアクションアーミー(SAA)だ!!私は声を大にしてこう主張したいが、SAAを100%楽しむためにはガンベルトも一緒に揃えなければならない。しかしながらガンベルトは本革製、それなりに高価だ。ウエスタン界隈では、昔からこれがウエスタンへの入門の敷居の高さのひとつとなっていた。
廉価版のガンベルトでも本革製なら、一生モノとまではいかないかもしれないが、数十年愛用することもできるので、コストパフォーマンスは決して悪くはない。だから初心者でもちょっと頑張って“良い物”を入手してほしいのだが、やはり初心者は購入を迷うところだろう。そこで今回は、まず私の体験談を踏まえながら愛用のガンベルト達をご紹介する。安価な既製品、中古で入手したもの、オーダーメイドで製作した最高級のものまでいろいろあるが、すべて今も愛用している。もちろん普段使いのもの、必要に応じてたまに使うものと使用の頻度は違うが、ふつうに使えて素材の革に問題のないガンベルトなら「SAAが好きなら買って後悔はないもの」だということを知っていただきたいのだ。
最高級のガンベルトは、いつも私を最高の気分にさせてくれる。だが高価じゃなければそういう気分になれない訳じゃない。ここはくれぐれも誤解しないでいただきたいところだ。既製品のガンベルトはシンプルなデザインが大半だが、多くの西部劇に登場するガンベルトはシンプルな物だし(だから西部劇のコスプレをするにはそういう物が必要だ)、「シンプルだからこそ飽きがこない」というのもある。そして本革製のガンベルトを長く使えば、それだけ愛着も湧く。たまに私の使い古しの既製品のガンベルトを「安く売ってください」という人がいるが、とんでもない!! 長く使って小傷も多く色落ちしていれば、それは“革製品ならではの味”なのだ。その人は「その味を出すためにどれだけ使い込めばよいか」をまったく分かっていない。ハッキリ言って新品ピカピカのガンベルトより、使い込まれた味のあるもののほうが断然、カッコイイのだ(もちろん手入れを怠っての単なる劣化は論外)。だから売るつもりはないが、もし売るなら買った時より高く売りたい位だ。
ファストドロウシューター達は、ガンベルトを「リグ」(Rig)とも呼ぶが、ガンベルトには大きく「早撃ち用」と「オールドスタイル」の2種類がある。早撃ち用のリグはハリウッド西部劇の小道具をルーツとするもので、それに対して実際の西部開拓時代で使われていたリグをオールドスタイルと呼ぶ。今回は早撃ち用に絞って話をしよう。
これは私、トルネード吉田が33年前に最初に買ったガンベルトだ。バスカデロスタイルの早撃ち用で彫刻入り。バスカデロ(Buscadero)とは、ベルトの下側にスリットを切って(縫い付ける物もある)そこにホルスターを吊るすタイプの物だ。当時すでに廃業していた東京CMC製のガンベルトの流れをくむもので、東京 中野にあったモデルガンショップのMGTS商店で購入した。私が最初に買ったSAAトイガンは、コクサイの金属製モデルガンのブラックパウダー オールドタイプ(現在絶版)の5-1/2インチバレルモデルだ。これの発売が1992年11 〜12月頃だが、買ってすぐにガンベルトも欲しくなり、大学時代の下宿から自転車を必死に漕いで(電車賃節約)MGTSへ行って購入したのだ。確か1万8千円位だったと思う。行く途中、おもちゃ屋のショーウィンドウにフェルト製の安物のこげ茶色のカウボーイハットがグレーのバンダナ付きで飾られて売っているのを発見、すかさず帰りにそれも購入。これらが私の西部のガンマンへの第一歩となった。購入から30年以上経っているが、このガンベルトは今でもたまにウエスタンショーや西部劇サバゲなどで使っている(写真の銃はコクサイ製ではなく、ランパント・クラシック製のモデルガンです)
コクサイ金属SAAブラックパウダー オールドタイプのシリーズ第2弾として4-3/4インチバレルモデルが1993年2月頃に発売されると速攻で2挺を購入した。その時すでに私は早撃ち&ガンプレイにドハマりしており、二挺拳銃がやりたかったのだ。そして腰の左右に2挺を吊れるガンベルトとして続けてMGTSですぐに注文・購入したのがこのガンベルトだ。店頭在庫に合うサイズがなかったので注文して造ってもらったが、確か2万2千円位だったと思う。先の1挺用と同じシリーズの物だが、20代から30代前半まではこのセットで早撃ちとガンプレイを来る日も来る日も夢中になって練習した。もちろん今でもたまに使う。生涯持っていたい自分の原点となる大事なリグだ。ずっと後になって『荒野の1ドル銀貨』のジュリアーノ・ジェンマのコスプレをするために彫刻のないプレーンなブラウンのダブルも購入した
それまで私は独りでウエスタンを楽しんでいたが、ハートフォードがCMCのSAAモデルガンを1994年4月にリメイク新発売すると、各地のトイガンイベントで販促のため早撃ちコンテストとガンプレイショーをやっているのが各銃器専門誌で紹介された。当時はスマホもインターネットもない時代、その技を見ることができるのは雑誌や本の写真しかなく(西部劇の映画もガンプレイが出てくる作品は意外と少ない)、実際のガンプレイを見る機会なんてなかったため、たまらず初めてトイガンイベントへ行ってみた。そこで知り合ったウエスタンの先輩たちに仲間に入れてもらい、ほどなく当時アメ横近くにあった超高級カスタムプロショップのL. A. Top Gun Art(現在は閉店)に通うようになった。そこで憧れのSPEED製のフル彫刻ダブルリグをオーダーした。SPEEDとは日本最高のプロ・ホルスター職人の小見山正夫さんのブランド名で、もちろんボーナス全力投球だ。基本のデザインは使い慣れたMGTSのダブルリグのリメイクだが、ホルスターはメタルライニング(内側に金属板が挟み込まれている)で、店長のプロデュースによってバックルはスターリングシルバー製をあつらえてもらったり、細かいデザインを工夫してもらったりして、私にとってはもうこれ以上ない究極のリグとして1998年8月に完成した。お値段はフォーティファイブまんえん(正確には.44-40円位)。これで1998年秋のWFDA-JAPAN主催のファストドロウ全国大会へ初出場した。今の私はその頃より約10kg近く太ったが、今でも何とかこのリグを同じベルト穴で着用できる位には体形をキープできている。この最愛のリグのため、これ以上は絶対に太れない。つい先日、久しぶりにこのリグで早撃ち&ガンプレイショーをやった。やはり私にとって最高のリグであることを再実感した
私は2004年に病気になり4ヶ月半も入院、トータルで半年近くも仕事を休んだ。西部開拓時代ならおそらく死んでいた病気だ。退院し社会復帰した際に、生まれ変わった気持ちになってファストドロウはツーハンドシューターへ転向することに決めた。それまでツーハンドの撃ち方は「西部劇の撃ち方じゃない」と好きではなかったが、愛用のバスカデロのリグはタイムを追求するには不利で(ホルスターの位置が低すぎる)、タイムが伸び悩んでため、それを打破するための決断だった。しかし競技特化のスタイルを好きになれるか自分自身、分からなかったため、考えた末に最高のツーハンド用リグをSPEEDへオーダーすることに決めた。そして2005年9月に出来上がったのが、このフル彫刻ツーハンド競技用リグだ。これのおかげでツーハンドの練習ががぜん楽しくなり夢中になってタイムを追求。その結果ツーハンドだけでなく、サミング(片手撃ち)も上達した。正確な値段は失念したが確か20万円以上、最高なだけに高価だった。だが丸20年経った今もこれで全国大会へ出場するし、着けるだけで最高の気分になれる。私は、ファストドロウは実は得意な方ではないが(というかファストドロウひとつに全力で取り組んでいるシューターの熱意・努力には敵わない)、このリグのおかげで全国大会は2017年に総合4位になることができた。あの時、思い切ってこのリグを購入して本当に良かったと今でも心底から思っている
このリグは伝説のホルスターメーカー(ガンベルト職人)のアンディ・アンダーソン製だ。日本製のリグももちろん良いが、ウエスタン好きとしては、やはり有名なアルボ・オジャラ製など本場アメリカ製の本物のリグには心底から憧れる。中でも一番の憧れは大好きなクリント・イーストウッドや、早撃ちを志すなら神様のような存在の伝説のシューター、セル“マーク”リードが愛用したアンディ・アンダーソン製だ。この写真はアンディ・アンダーソンのブランドの物で(彼の弟子のヴィクター・ペレスの製作品)、2018年10月にウエスタンの先輩から中古で入手した。リグのモデルとしては「AA」と名付けられた商品名のものだ(通称ビキニ)。ホルスターがベルトの上をオーバーハングする形で取り付けられ、かなり高い位置にあるのが特徴。この高さは人によって好みが分かれるところだが、私にはピッタリだ。ちなみにお値段はお友達価格で10万円。ガンベルトの中古市場は貴重な物でも意外と高値がつかない場合が多い。サイズが合わないと着用できないため、買う人が限られるからだ
ホルスターの裏面にはアンディ・アンダーソン製であることを示すトランプのスペードAのスタンプが押されている。ホルスターは、もちろんメタルライニングだ
2005年にツーハンドシューターへ転向はしたものの、長年の西部劇スタイルが抜けきれず、より安定して速いタイムが出せるように全国大会のダブルブランクス(2連射で風船2個を割る種目)だけは、やり慣れた初弾サミング+次弾ファニングの撃ち方に戻すことに決めた。そこで購入したのが写真のイースト.Aのウエスタンガンベルト(品番No.001)で、2012〜2013年頃のことだ。当時の定価は21,000〜23,100円でファストドロウへの入門用リグは、まさにこれだった(2017年では27,800〜30,600円へと値上がり)。元のスタイルはバスカデロだが、組み直すことで写真のような早撃ち向きのオーバーハングへ変更することが可能だ。基本的に良く出来たリグだと思うが、全国大会で使うには、私にはひとつだけ気になる点があった。構えたところから銃を握りにいく際に、中指の先がホルスターの縁(赤矢印)にわずかに引っ掛かる時があるのだ(ここは使う人によるようで、全く気にならない人もいる)。ふだん遊ぶ分にはまったく問題ないのだが、全国大会でこれが気になって集中を欠いたことが何度かあったため、競技では先にご紹介したアンディ・アンダーソンのAAやウォーク&ドロウのリグへ交代となった。だがイースト.Aのウエスタンガンベルト(No.001、002)のデザインは由緒正しいもので、元は日本ウエスタン界のレジェンド国本圭一さんの愛用のリグだ(おそらくgoro's(ゴローズ)製と思われる)。イースト.Aが国本さんに正式に許可をもらって、オリジナルに忠実に複製したものだ。私は競技ではお役御免としたが、2017年に総合4位を獲った時にダブルを撃ったのはこのリグだし、サバゲや西部劇のコスプレなどでは今も変わらず愛用、色もブラックとブラウンで2本揃ている
2019年に小劇場の西部劇の舞台でガンアクション指導や演出の手伝いをすることになり、その関係でネットオークションにて中古で2万円位で入手したのがこの写真のSPEED製のリグだ。アンディ・アンダーソンで最も定番のスタイル「ウォーク&ドロウ」(クリント・イーストウッドが1970年代前半までの西部劇で愛用したリグのスタイルだ)のレプリカで、かつてMGCの店舗で販売されていたものらしい。サイズは少し小さめだが、問題なく着用できた。使ってみると非常に抜き差ししやすく、まるで自分の身体の一部のようにすぐに馴染んだ。数多く所有する早撃ち用のリグの中で最も使いやすいのは、このリグかもしれない。そのため様々な場面で最も気に入って愛用するリグのひとつとなった。ただし「最も使いやすい=最も速く抜ける」ではなく、私の場合AAのほうが速いタイムを出せた
ここでガンベルトの正しい着用方法をご紹介する。写真はズバリ悪い着用見本だ。西部劇を数多く観てきた者としては失笑するレベルにダサイ着け方だが、この着け方をする人は少なくない。こんなダメな着け方をしてしまう原因のひとつが、ローライズのジーンズやパンツ(ズボン)を履く人が多いことだ。ガンベルトはウエストではなく腰骨の位置で巻くが、パンツの股上が浅いと写真のようにパンツのベルトの上にガンベルトを巻くことになってしまう。これではガンベルトが安定しない。まずは股上の深いジーンズ、たとえばラングラーの13MWZや936などを履こう。もちろんパンツをしっかりと上げて履かないとダメだ。それと修正したいのはホルスターの位置。脚が動きやすいようにホルスターを写真のように腰のやや後方で吊る人が多いが(特にサバゲーマーで)これでは速く抜けない。早撃ちを目指すなら、真横より少し前の位置で吊るのだ
速く撃つためのホルスターの位置がこれ。真横より少し前だ。少し動きにくくはなるが、早撃ちガンマンはそんなことは気にしない。注意したいのは写真のような2挺吊りのガンベルトを買う時だ。腰の左右でこの位置に吊れるような適正なサイズのものを選ばなければならない。1挺用なら位置をずらして着ければよいが、2挺用はそうはいかない。だから2挺用を買う前には必ず試着した方がよい
初心者へオススメのSAA用ホルスター
平成の時代の頃まではファストドロウの入門用のガンベルトはイースト.Aのウエスタンガンベルト(品番No.001、No.002)が定番だったが、ここ数年は原材料の高騰により価格も急上昇、現在は定価でNo.001(右用のシングル)が47,300〜48,950円、No.002(左右のダブル)が64,240円(現在は廃番)と初心者にはかなり高額になってしまった。もちろん良い物なので、この価格でも買う価値はある。実は私自身、中学時代に仲良しの級友が『荒野の七人』だか『荒野の1ドル銀貨』をTVで観たとかでSAAモデルガンとガンベルトを買い、それで遊ばせてもらった影響で「僕もSAAが欲しいな」と思ったことがあったが、ガンベルトが中学生の小遣いではあまりにも高額だったため、すぐに買うのをアキラメたことがあった。「初心者にこんな経験をしてほしくない」と思い長年考えた末、ついにアームズマガジンプロダクツとして安価で使いやすく、長く愛用できるSAA用ホルスターを企画し、発売することができた。それがナイロン製の「ネオ・カウボーイ」(2022年発売)と本革製の「ネオ・カウボーイ レザー」(2023年発売)だ。もちろん私自身も愛用しており、自信をもってオススメできる製品なので、改めて詳しくご紹介したい。
トルネード吉田企画・監修 イースト.A別注品 アームズマガジンオリジナルプロダクツ
ネオ・カウボーイ/ネオ・カウボーイ レザー
コルトSAA対応早撃ち ナイロンホルスター ネオ・カウボーイ
価格:¥4,730(2022年8月発売)
仕様:ナイロン製、ホルスター単体、右利き用、左利き用あり、色はブラックのみ
コルトSAA対応早撃ち レザーホルスター ネオ・カウボーイ レザー
価格:¥17,600(2023年8月発売)
仕様:本革製、ホルスター単体、右利き用、左利き用あり、色はブラウンとブラック、WFDA-JAPAN公認
*どちらも全国のホビーショップやトイガン・ミリタリー専門店で購入可
ナイロン製のネオ・カウボーイ、本革製のネオ・カウボーイ レザーとも、ベルトは付属しないホルスター単体の商品だ。お手持ちの幅1-3/4 インチ(約45mm)までのベルトに装着して使用し、各社SAAトイガンの銃身長4-3/4インチ、5-1/2インチモデルに対応する(ネオ・カウボーイ レザーのみ、ハートフォード製モデルガンのコルトM1877ライトニング 4.5インチバレルにも対応)
ネオ・カウボーイ シリーズの発売は、私の長年の悲願だった。より多くの人にSAAやファストドロウ、ウエスタンを気軽に楽しんでいただけるように手頃なお値段で、長く使え、使いやすく自由度が高いデザインで、全国のホビーショップやトイガン・ミリタリー専門店で購入できるSAA用のホルスターを出したかったのだ。また左利きの人が使えるガンベルトが極端に少ない問題にも対応したかった。ナイロン製のネオ・カウボーイなら中学生でもお小遣いで買えるはずだし、ネオ・カウボーイ レザーは非常に使いやすく、ファストドロウやガンプレイ、サバゲ、SAAを使ったスピードシューティングなど、オールマイティな用途で使える上に、WFDAJAPAN公認で、ファストドロウ全国大会で全く問題なく上位入賞を狙っていける
ベルトとホルスターで革の色や質感を合わせたいユーザーのために、専用のベルトも別売中。ただし、こちらはポストホビーWEBショップ内のアームズマガジンWEBショップ限定の商品だ
WFDAトラディショナルスタイルのホルスタールール
● ホルスターは構えた状態で横から見たときに、フレームの付け根からバレルの全部とシリンダーの50%をカバーしなければならない。
● スウィベルホルスター(軸で回転するもの)やブレイクオープンホルスター(前が開くもの)などは使用できない。
● 銃とホルスターはシューティングスタンスにある間、垂直面に対して35°以上傾斜させてはならない。
● ホルスターはウエスタン・スタイルで、上部と底は開口していなくてはならない。
● ホルスターは銃にフィットしていなければならない。いわゆる「バケットブーツ」や「スピードブーツ」は使用できない。
● ブーツトップの内側の長さは、ライナーも含んで、幅2インチ(5.08cm)以内、縦3インチ(7.62cm)以内とする。
● ブーツの身体側のリップは、選手の身体から3-1/2インチ(8.89cm)より離れないこと。
● ホルスターは“タイダウンストラップ”を足に締めなければならない。
● ホルスターの底は、スペーサー無しで、足に接していなければならない。
● ベルト部分はウエスタン・スタイルで直線的でなければならない。ドロップベルト(極端にカーブしたもの)は使用できない。
※1 ナイロン製のネオ・カウボーイはウエスタン・スタイルには該当しないため、WFDA-JAPAN公式の大会には出場できません(ローカルの練習会などでは使用可能です)。
※2 イースト.AのウエスタンガンベルトNo.001、No.002のホルスターは、角度が少し大きめについているため、使う人によっては「シューティングスタンスにある間、垂直面に対して35°以上傾斜させてはならない」を違反してしまう場合があるので競技では注意が必要です。
現在日本でファストドロウ全国大会を運営する団体がWFDA-JAPANだ(1997年より活動開始)。アメリカ本国のWorld Fast Draw Association(世界早撃ち協会)=WFDAの日本支部での正式な活動を行う組織であり、アメリカで実銃を使うWFDAのルールを日本のトイガン向けにアレンジしたルールを制定している。ホルスター(ガンベルト)に関するルールについては本国WFDAと同じであるが、左のような規定となっている。ネオ・カウボーイレザーの「WFDA-JAPAN公認」とは、公式にこれを満たしているということだ。
ファストドロウへの完全対応・使いやすさが、私の最もこだわったポイントだ。すなわち、ネオ・カウボーイ レザーには、ここまでご紹介してきた私の愛用のリグたちの優れたところを全て詰め込んでいるのだ。例えば銃に手をかけた際に指(特に中指)がホルスターの縁に触れず、抜く動作に一切干渉しないデザインとなっている。写真はネオ・カウボーイ レザーベルトで着用した例だ。ホルスターの吊り方としては、アンディ・アンダーソンのAAに近いスタイルといえるが、AAほど高い位置にはならず、多くの人に好んで使っていただける標準的な高さで吊ることができる
ネオ・カウボーイ レザーは価格を抑えるため、あえてメタルライニングにはしなかった。メタルライニングとは、ホルスターの二枚重ねの革の間に金属板を挟むことでホルスターの形を同じに保ち、SAAをホルスターに入れたままシリンダーが抵抗なく回転できるようするものだ。メタルライニングではないため、買った新品のままだとSAAが革に挟まれてタイトに収まる。SAAをホルスターへ軽く挿したところが左写真だ。ファストドロウ用のホルスターでは通常、トリガーガードがホルスターの中へ入らないものが多いが、本製品は力を入れて銃を押し込むとトリガーガードの前方までホルスターに入る仕様となっている(中央の写真)。こうすると逆さにしても銃が落ちない位のテンションで保持される。これは脱落防止として、サバゲなどで走り回っての激しいアクションで使用されるユーザーを考えてのものだ。ファストドロウで速く抜くためには、もう少し緩い方が良いので、その工夫を後述する
サバゲなどでの使用も考えて銃がタイトに収まるようになってはいるが、やはり早撃ち用のデザインのため、サバゲで激しく動くなら落下防止対策は必須だ。そこで本場アメリカ製のファストドロウ用ホルスターの多くがそうなっているように、ハンマースパーに引っ掛けるストラップを取り付けるとよい。例えば写真のように革紐(またはパラコードなどの適当な紐)を用意して60cmほどに切断、リングを作り、ホルスターの上部へ縛るので充分だ
ネオ・カウボーイ レザーベルト
別売りの専用本革製ベルトは厚さ4mm、幅は39mmでガッシリとホルスターを保持する。ジーンズなどのパンツベルトとしても使用でき、バックルのピンを留める穴は7つと多めにあけられているため、ウエストから少し下げた腰まわりの位置への装着も可能だ。付属のスクエアギャリソン型のバックルはホックを外すことで簡単に取り外すことができ、お好みのバックルへ交換することができる。下の写真は交換した時の見本で、このコルト純正のバックルは私の私物で参考品だ。ちなみに写真のようなトロフィーバックルに交換するなら、サル革(赤矢印のループ部分)はあった方が良い。100円程度で売っているものもあれば、長さ10.5cmほどの短い革の帯とサル革留めの金具(50円程度)を使って簡単に自作することもできる。写真のサル革は私の自作だ
ファストドロウで使うためのひと工夫をご紹介する(ここ重要!)。やり方は簡単。ホルスターの中でシリンダーがスムーズに回転するように、写真のように形を整える。すなわちホルスターを“縦につぶす”のだ。写真では両手でやっているが、実際には革が硬いため床やテーブルの上などに置いて、思いきり体重をかけて縦に押しつぶす。中央の写真で左が買ったままの状態、右がつぶした状態。このようになるまで形を変える。右の写真は銃口側からだが、SAAは銃身の右側にエジェクターがあるため、右利き用・左利き用に関係なく、このように下から見て左下へ楕円が傾くように形を変えると良い。なお、この工夫はネオ・カウボーイ レザーに限らず、すべてのSAA用ホルスターに応用できる
ネオ・カウボーイ レザーは折り曲げた革の裏側から1本の皿小ネジで固定されている。このネジはM4×12mmだが(写真左)、最後まで締め込むとホルスターの内側がわずかに膨らんできてしまう。ネジを深く締め込みたい方は2mm短いM4×10mmに交換することをオススメする(元のネジを2mm短く削ってもよい)
ネオ・カウボーイ レザーをさらにファストドロウ競技向けにする工夫をご紹介する。写真のようにPP(ポリプロピレン)シートを切り出してライナーにすると、銃を抜く時の摩擦を軽減できる。このPPシートは0.75mm厚でA3サイズならホームセンターにて数百円で買えるものだ。この工夫はファストドロウ日本チャンピオンのT. K. Hero江田さんから教えてもらった。なお、ネオ・カウボーイ レザーは発売前に最終試作を江田さんにもテストで使ってもらい、全国大会で上位入賞が狙える物であることを確認してもらっている
非常に使いやすいネオ・カウボーイ レザーだが、ファストドロウ競技用として考えた場合、少し気になる点が出てくる。ホルスターがベルトに固定されていないため、前後に少し動くのだ。それと使い勝手には関係ないが、見た目としてベルトが細い感じがすることだ。そこで私自身の工夫として、同じイースト.A製のウエスタンガンベルトに取り付けることを考えた
この写真は、ネオ・カウボーイ レザーをイースト.Aのウエスタンガンベルト No.060 / No.070に取り付けた例だ。No.060 / No.070はベルト単体の製品で定価は29,150 〜36,740円、本来はホルスター単体の「ウエスタンループホルスター」(定価16,280円)と組み合わせて使う物だ(ただしNo.070は製品在庫がなくなり次第、廃番)。私にはこの組み合わせがすこぶる使いやすく、最近はネオ・カウボーイ レザーの宣伝も兼ねて全国大会のダブルブランクス(風船2個割り)は、これで出場している(今年はダブルの種目別順位で出場者54人中9位を獲得)。ただし、この組み合わせをするには、ちょっとした簡単な加工が必要だ
No.060 / No.070のベルトはネオ・カウボーイ レザーには太すぎるので、写真のようにベルトにポンチで穴をあけ、そこへ固定する。こうすればホルスターが前後に動くこともなく、見た目としても本格的なファストドロウ用ガンベルトとなる。穴の位置決めは、まずネジを取り付けない状態でホルスターをベルトに付けて、しばらく早撃ちを練習する。するとベルトにホルスターのナットの擦れた跡がつくので、それを目印にして穴をあければよい
キャプション穴を開けるためのサークルポンチ(ハトメ抜き)は18号(5.4mm)だ。合わせてホルスターの革の間にベルトを挟むため、付属のネジのM4×12mmでは長さが不足するため、M4×16mmへ交換する必要もある
これは先ほどご紹介したイースト.Aのウエスタンガンベルト No.001だ(No.002は左右の2挺吊り)。ベルトの下側にスリットを切って、そこにホルスターを吊るすバスカデロスタイルとして、この状態で売られている。西部劇ではおなじみの人気のスタイルだが、ファストドロウでタイムを追求するには、ホルスターの位置が少し低い
ウエスタンガンベルト No.001をファストドロウで愛用する多くのシューターは右写真のようにホルスターをオーバーハングへと組み直している。T. K. Hero 江田さん愛用のガンベルトも、この吊り方とPPシートのライナーの組み合わせだ
先に述べたとおり、このウエスタンガンベルト No.001はホルスターの矢印の部分が、人によっては中指の先が引っかかりスムーズなドロウを妨げる場合がある。私はこれが気になって仕方がないが、江田さんはまったく問題ないそうだ。だが私と同じように気になる人は少なくないようで、引っかかる部分を内側に曲げたり、カットしたりといろいろ工夫しているようだ
だが写真のようにホルスターをネオ・カウボーイ レザーに交換すれば、この問題も1発で解決する。ネオ・カウボーイレザーは、このNo.001のベルトにも無加工で取り付けることができるのだ。ホルスターの高さもほぼ変わらず、前後にも動かない。私と同じ悩みをお持ちの方は、ぜひ試していただきたい
まとめ
どのガンベルトにも個性があって、それぞれ優れた点と味がある。お手入れ(革用オイルによる保湿)を欠かさなければ、かなり長く愛用できるはずだ(それと「体形が大きく変わらなければ」だが)。コスパは決して悪くないはずなので、もし購入を迷っているなら、この記事をご参考に決断していただければ幸いだ。続きとなるオールドスタイルガンベルト編も準備中で近いうちに掲載予定だ。私はガンベルトも大好きなので、話題はまだまだたくさんあって尽きないのだ。
この記事は月刊アームズマガジン2026年1月号に掲載されたものです。
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