金属モデルガンでたどる名銃ワルサーP38のミニ競作史

 

かつてワルサーP38は、日本のガンファンの間で、永遠の名銃と呼ばれていたことがある。銃としての完成度が高く、これ以上のものは作られず、ずっと残り続けるだろうと思われていたのだ。その複雑巧緻なメカニズムには夢と憧れが詰まっていた

 

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MGC ワルサーP-38（1968年）

ミリタリーモデル、コマーシャルモデル、ゲシュタポモデル

 

 

ミリタリーブームに合わせて作られたP38

 

　1960年代後半、TVドラマの『コンバット』（1962 〜1967）や『ラット・パトロール』（1966 〜1968）、『バルジ大作戦』（1965）や『特攻大作戦』（1967）など多くの戦争映画、タミヤの1/35ミリタリーミニチュア・シリーズのプラ模型（1968年発売）などの大ヒットにより、ミリタリーブームも起きていた。
　それに合わせMGCはP-38（MGCの表記）のミリタリーモデルを1968年に発売した。ベースはP-38アンクルタイプで、もちろん作動方式はスライドアクション。しかしアンクルタイプはオリジナルの形状とは異なる部分が多く、バレル、スライド、フレーム、グリップが新たに設計し直された。
　参考にされたのは、当時MGCモデルガンの海外販売を手がけていたアメリカのRMI社の社長が持っていたP38。そのためオリジナルのP38にはないリアサイト前のねじも、そのまま再現された。設計を手がけた小林太三（こばやしたぞう）さんによると、当時は実銃がそうなっていればそういうものだと信じて、個人がカスタム化した可能性などは考えなかったという。
　そしてRMIの要望により、アメリカで人気だったナチスドイツのシンボルマークをグリップ右側に刻んだグリップも再現して装着された。さらにショートバレルのゲシュタポモデルも、RMIの要望でセミカスタムとして加えられた。結果、その構造ゆえ、2つの法規制を生き残り、長くファンに愛された。

 

 

 

 

※このモデルガンの写真はすべて （Photo by Keisuke.K）

 

 DATA 

主材質：亜鉛合金
撃発機構：なし
発火機構：前撃針（装填衝撃発火方式）
作動方式：スライドアクション
カートリッジ：ソリッドタイプ
使用火薬：平玉紙火薬
全長：200mm〈 148mm〉
重量：800g〈 735g〉
口径：9mmパラベラムショート（P-38、ベレッタ共用）
装弾数：8発
発売年：1968年
発売当時価格：

　3,300円、ガンブルー仕上げ3,600円

　〈3,600円、ガンブルー仕上げ3,900円〉、

　カートリッジ別売　12発箱入り　350円
〈　〉内はゲシュタポモデル

 

※経年変化等によってめっきの金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

 

CMC ワルサーP.38（1971年）

コマーシャルモデル、ミリタリーモデル、ゲシュタポモデル

（広告での表記、カタログではタイプと表記）

 

 

 

多くのファンに高く評価された金属P38

 

　1971年10月20日に第1次モデルガン法規制が施行される1年ほど前から、CMCは専門誌への広告の出稿をやめた。多くのファンはCMCがモデルガンの製造から手を引くのではないかと心配したが、規制法施行直前の8月末売りの専門誌から広告を復活すると、いきなり新製品2機種の発売が告知された。1つは法規制対象外のサブマシンガン、ステンMk IIだったが、もう1つは法規制対象となるハンドガンのP.38（CMCの表記）だった。
　規制までわずか2カ月。すぐに色を塗って、銃口を閉じなければならないのに、なぜ？　想像するに、時間を掛けて開発に取り組んでいたものだったので、少しでも早く発売したかった、黒い姿をファンに見せたかった、のかもしれない。
　原型製作を手がけたのは、独立して自分の会社「六研」を立ち上げた六人部登さん。二つ折りの豪華カタログの分解図のところに、N. Mutobeのサインが入っている。
　中田時代にP38を手がけた時、すでに必要なデータはそろっていただろうから、それに基づいて製作が進められたと思われる。おそらくスライドの幅が標準サイズにされたのと、マガジンも原寸大にされたのだろう。カタログには「徹底的に実物の復元化を図った」と記されている。
　法規制後の1973年になってブローバックモデルが発売された。当時はまだまだ発火派が主流だったが、銃口が閉塞され発火ガスが抜けなくなったため、この頃から発火させない模型派が増えていった。特に本格的なメカニズムを持つCMCのP.38はそんな模型派にピッタリの金属製ハンドガンだった。

 

 

 

 

 

 DATA 

主材質：ジンクダイカスト、ABS樹脂（グリップ）
撃発機構：ハンマー、シングル＆ダブルアクション
発火機構：フロントファイアリングピン＆ファイアリングプレート
作動方式：スタンダード＝手動操作、ロックトショートリコイル／ブローバック＝ストレート
カートリッジ：ソリッドタイプ／オープンタイプ
使用火薬：平玉紙火薬5 〜6粒（ブローバック）
全長：214mm
重量：820g
口径：9mm
装弾数：7発
発売年：スタンダード　1971年、ブローバック　1973年
発売当時価格：スンダード　4,000円／
ブローバック　7,000円、各カートリッジ7発付き

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。（2025年現在）
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

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※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制（改正銃刀法）以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。

 

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年1月号に掲載されたものです。

 

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