2025/10/28
昭和大好きかるた 時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る 第39回「ら」
時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る
第39回
ら
ラジオ番組
令和となってはや幾年。平成生まれの人たちが社会の中枢を担い出すようになった今、「昭和」はもはや教科書の中で語られる歴史上の時代となりつつある。
でも、昭和にだってたくさんの楽しいことやワクワクさせるようなことがあった。そんな時代に生まれ育ったふたりのもの書きが、昭和100年の今、"あの頃"を懐かしむ連載。
第39回は、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之がお送りします。
![]()
昭和時代、カセットテープから音楽を聴くためには“ラジカセ”ことラジオカセットレコーダーが必要でした。
雑音込みの同録をひたすら聴き込んだ昭和時代
我が家には古いタイプのラジカセがありましたが、当然テープは両親の好きな歌手やお気に入りの曲しかありませんでした。
テープを聞くためには録音した曲が必要です。
そこで、当時の多くの若者は、TVの歌番組から曲を録音していました。その方法は、TVのスピーカー部分にラジカセを近づけて、録音ボタンを押すという恐ろしくアナログな方法です。ですから外からの音も拾ってしまいます。咳をするなどもってのほか。
ですから、精神を統一し、ゆっくりと録音ボタンを押します。この“ゆっくりと”がポイントで、力強く押すと「ガチャッ」というボタンの音が入ってしまうからです。そしてボタンを押した後は、物音を立てずにゆっくりと座り直します。こういう時に限って、母親の「ごはんよー、早く食べちゃいなさい」という絶叫に近い声が階下から聞こえてくるものでした。
小学生の頃、野球中継を見ていて、興味が湧いたものがあります。それは野球選手の華麗なプレイではなく、アナウンサーの必死な実況中継でした。
小学生時代のいつ頃か記憶は定かではないのですが、携帯ラジオを誰かからもらいました。それを使うと、野球中継の実況が、TVよりもしっかりと聞こえてくるので、愛用することになります。アナウンサーの声を聞くために野球中継に耳を傾けるという、珍しい小学生でした。
聞いていくうちに、私も「やってみたい!」という願望が芽生え始めます。
そして遂に、ラジカセを使い、野球の実況中継を再現することにしました。ラジカセの録音ボタンを押し、番組はスタートです。
リアルタイムで中継するわけでなく、前日の試合を自分なりに中継するという方法でして、いかにそれっぽく話すかに重点を置きました。と言っても体力も能力も続かないので、3回の裏ぐらいまででストップ。後から聞き返し、当時の私は納得。今実家にこのテープが残っていたら赤面レベルですが、とにかく私は「楽しい」と思ったようです。
ラジオDJを目指した子どもの頃の夢をかなえる
そして小学校高学年頃には、ラジオ番組も聞きだし、ここで「DJって面白そうだ」と思いました。
この流れに乗って、遂に架空の番組を作ることを決意。
基本的に番組はDJの一人語りで、途中に曲を紹介するというもの。途中でニュースを挟んだり、野球中継で番組の前半部分が押したり(その中継も私がやりました)と、謎のイレギュラーも再現。
何を思ったか、仲の良い友達に無理やり聞かせてみました。すると、なんと反応ヨシ。そこで、友人を次々家に呼んで、番組内にトークコーナーを設けました。
こうしてどんどん番組内コンテンツが増えていきました。「お前、しゃべるの上手いなぁ」と友達に言われて、「こういう人前でしゃべる仕事も良いかも」と、身分不相応な夢も抱きました。
しかし、この自作ラジオ番組は、途中で飽きてしまい、中学生になる前にはいつしか自然消滅…。
ただし、ラジオ番組自体は大好きで、時代は昭和から平成へと移り変わる1989年より放送されたTBSラジオ『ポップンルージュ』に大ハマリ。パーソナリティも曜日ごとに入れ替わり、月曜日の永井真理子、火曜日の笹野みちる(東京少年)、水曜日の奥居香(プリンセスプリンセス)は欠かさず聞いていましたし、番組にハガキを投稿したりしました。
それから時を経て、コロナ禍に見舞われた2019年。取材もままならず、自粛生活を余儀なくされ、私は家に閉じこもる日々。それはそれでのんびりできて良かったのですが、すぐに飽きました。
そんな中、友人の動画カメラマンより、「Youtubeはじめてみない?」と誘われます。自作ラジオ番組を作っていたあの頃が脳裏を過ぎ、その申し出を受けました。当時よりも幾分番組風には近づけたと思っています。
自衛隊&ミリタリー関係が中心ですが、終着駅巡りなども楽しいチャンネルです
あのテープはどこにいったのでしょうか。多分、中学生頃にふとした拍子に聞き直してしまい、恥ずかしさに捨ててしまったのか。もしくは、実家をひっくり返せば、どこかから出て来るのか……。
不出来で、人に聞かせられるものではありませんが、今の私の仕事に繋がる原点だったのかもしれません。
TEXT:菊池雅之
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

