エアガン

2025/10/06

オールドモデルガンアーカイブ:.22口径金属モデルガンの世界【Part.2】

 

 1970年代後半から1980年くらいにかけて、日本はマグナムブームに沸いていた。よく銃のことを知らない人でも、マグナムという言葉くらいは知っていた。スゴイとかデカいというような意味合いで、マグナム○○などというようなネーミングも流行った。そんな時、対極となる最小口径ともいうべき.22口径銃も、ガンファンの中では実は同時進行で(プチ)ブームが起きていたのだった。

 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。

 

CMC
ルガー・オートマチック・マークⅠ(1978年)

 

CMC製ルガー・オートマチック・マークI 4 3/4インチ

 

 .22口径金属製量産モデル第1号 

 

 .22口径のモデルガンは、限定生産の高級カスタムから始まった。おそらく業界内でまことしやかに囁かれていた「.22口径は売れない」「.22口径には手を出すな」という迷信というかタブーがあったから、おそるおそる手を出してみたということなのだろう。カスタムなら小数から始められ、その後の製造数の調整も、よほどの増産でもない限り比較的容易だ。
 すると案外人気が高く、話題になったものだから、ついに量産モデルで作られることになった。手がけたのはCMCで、設計は六研の六人部登さん。六人部さんの手元には実銃のルガー・マークIのグリップがあり、国際産業(長興)のルガー・マークIが実銃よりわずかに小さいことに気付いていた。そこでリアルサイズで作りたいという希望があったという。
 また当時は、1977年の第2次モデルガン法規制後だったため、オートマック型の金属製ハンドガンは銃身とレシーバーが一体でなければならず、作ることができるモデルが限られていた。ルガー・マークIはピッタリだった。


 詳細な資料写真と主要部分の寸法を提供したのは、銃器研究家の床井雅美さん。おかげで実銃を横に置いて設計したかのようなリアルなルガー・マークIとなった。
 設計にあたり注意されたのは、.22口径弾は日本でも許可証があれば入手可能なので、万が一に備えた安全対策。マガジンは実弾の入らないサイズにし、カートリッジの底部を叩くファイアリングプレートがリム部分ではなくセンターを叩くようにした。
 完成したCMCのルガー・マークIは、量産モデルでありながら国際産業(長興)のカスタムモデルのルガー・マークIに匹敵するかそれ以上のタイトなモデルに仕上がっていた。しかもブローバック作動する。ボクの周りでは買った人が多かったが、どのくらいのヒットとなったのかは良くわからない。ただ、大変良くできたモデルガンで、そのレベルがとても高かったことは確かだ。

 

カートリッジはストレート形状で、センターファイアのような雰囲気。オープンタイプだが穴の奥にガスプールがある

 

トリガーはシンプルに金型でセレーションを表現するため、階段状の段が付けられていた

 

ボルトを引いた状態を真ちゅう製カスタムと比べると、こちらのほうが丁寧な仕上がりに見える

 

実銃どおりに再現されたマガジンキャッチ。なかなか使いづらいことがモデルガンからもわかった

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金
発火機構:前撃針/ファイアリングプレート
撃発機構:内蔵ハンマー、シングルアクション
作動方式:フロントファイアリング・ブローバック
使用火薬:平玉紙火薬
カートリッジ:オープンタイプ(ガスプール付き)
全長:227mm(4 3/4インチ)、282mm(6 7/8インチ)
重量:1,000g(4 3/4インチ)、1,180g(6 7/8インチ)
口径:.22
装弾数:8発
発売年:1978年、ブルバレル1979年
発売当時価格:8,000円(スタンダードタイプ4 3/4インチ)、8,500円(ブルバレル5 1/2インチ)、8,500円(ターゲットタイプ7 7/8インチ)、木製ターゲットグリップ 2,300円

 

※経年変化等によってめっきの金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

 

CMC
ワルサーGSP Cal.22オートマチックピストル(1979年)

 

CMC製ワルサーGSP Cal .22オートマチックピストル

 

 モデルガンファンを驚かせた標的射撃競技用銃 

 

 1977年の第2次モデルガン法規制により、金属で作ることができるのは、バレルとレシーバー(フレーム)が一体でなければならなくなった。そのためモデルガン化できる銃が大幅に限定されることになってしまった。
 しかし一方で.22口径の銃も売れることがわかったわけで、その意味では選択の幅が広がったとも言える。
 そんな中、六研の六人部登さんは銃器関係の洋書でワルサーGSPを見かけた。.22口径で、バレルとレシーバーを一体で作ることができる。しかもカッコいい。ひと目で気に入ってCMCにモデルガン化しないかと提案したという。するとマグナムブームの中、すでにCMCは金属製のS&W M29を発売していたし、業界的にマグナムは飽和状態。新たに発売した.22口径のルガー・マークIが好評だったこともあってか、即決で作ろうということになったらしい。
 とはいえ、六人部さんの手元には設計に必要なデータや資料がなかった。かろうじて実物グリップがあるだけ。そこでルガー・マークI同様、ドイツと日本に事務所を持つ銃器研究家の床井雅美さんに実銃の取材を依頼し、詳細な資料写真と主要部分の寸法などを提供してもらったという。


 そして、万が一の安全対策を盛り込みつつ、可能な限り実銃そのままに再現された。クリック付きのフルアジャスタブル・リアサイトはもちろんのこと、トリガーも実銃同様、細かな調整ができるようになっている。
 その結果、パーツ表での部品点数はルガー・マークIのほぼ2倍に当たる79点に達した。しかもパームレストが調整可能な木製のアナトミーグリップまで標準で装着されているため高価となった。18,000円はハンドガンとしては破格で、長物に手が届きそうな価格。
 しかも、ほとんどTVや映画で見かけることのない標的射撃競技用銃。多くのファンにとってはまさかのモデルガン化で、見慣れないスタイルのため発売当時は人気が今ひとつだった。ところがその後、再評価されて人気が急上昇。いまだに中古市場では高値で取引されている。

 

ストレート形状のカートリッジは、同じCMCのルガー・マークIと同じように見える。試してはいないが、互換性があった可能性は高い

 

量産モデルガンでは一体で作られることの多いフロントサイトも、ちゃんと別部品でねじ留めされている

 

リアサイトは上下左右調整可能で、しかもクリックストップ付きという本格派

 

実銃のバレル・ロッキングスクリューは、モデルガンでは中空のねじで、発火時のガス抜き穴(バイパス)として使われている

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金ダイカスト
撃発機構:ハンマー内蔵式/ファイアリングプレート
作動方式:フロントファイアリング・ブローバック
カートリッジ:オープンタイプ(ガスプール付き)
使用火薬:平玉紙火薬3粒
全長:30cm
口径:.22ロングライフル(LR)
重量:1,200g
装弾数:5発
グリップ:木製(輸入材使用)
発売年:1979年
発売当時価格:18,000円(カートリッジ5発付き)

 

※経年変化等によってめっきの金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 

TEXT&PHOTO:くろがね ゆう

※ワルサーGSP Cal.22オートマチックピストルの写真はすべてPhoto by Keisuke.K

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年11月号に掲載されたものです。

 

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