2025/12/13
92G ELITE LTT ラングドンタクティカル

Gun Professionals 2021年7月号に掲載
ポリマーフレームのストライカーファイアピストル、これが現在のミリタリー、ポリス、そしてディフェンス用ハンドガンのトレンドだ。世界中のガンメーカーがこのスタイルで製品を供給している。しかし、トラディショナルDA/SAトリガーを装備したメタルフレームのベレッタ92系だってまだ終わったわけではない。ラングドンタクティカルテクノロジーは、92が持つ大きなポテンシャルを引き出した魅力的なカスタムガンを市場に供給している。
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キャリオプのベレッタ
これまでの約30年間、ベレッタ92シリーズは1985年に米全軍にM9として採用された実績に支えられてきた。宣伝広告ではM9の存在が毎回強くアピールされ、ベレッタもそれに頼りっきりという状態で、92系の新製品開発の手を休める時期も見受けられたが、その追い風はすでに吹き止んでいる。
M9の後継サイドアーム選出のために企画されたHMS(モジュラーハンドガンシステム)プログラムの結果が2017年1月19日に発表され、M17とM18としてSIG SAUER P320が選択された。遂にM9にも終焉の日がきたのだ。
当初は米陸軍のみだったが、予想通りに米軍全体に採用の動きが広がった。しかし入れ替えには相当な時間がかかり、大量のM9が現在も運用され続けている。
サイドアームであるためM16/M4シリーズのように軍歴のある兵士全てが勤務中に手にして撃ち込むほどの機会があるモデルではなかったが、1985年から32年間という時間は、ベレッタに親しみを持つユーザーを数多く育ててきた。かつてその対象はコルトガバメントであり、それがベレッタ92となって、現在、そしてこれからの世代にとってSIG P320という事になる。
米軍が採用したことの影響力は大きく、全米だけでなく世界の法執行機関の間でも数多くの92系が採用され、デューティウェポンとして愛着を持つ人達を世界中に作り出してきた。しかしポリマーフレームが主流になった現在、そしてM9が退役した結果として、92系の存在が次第に色褪せていくことが容易に想像できた。
しかしベレッタはそれを受け入れず、急に活力を取り戻したかのように92系の新製品開発に力を入れ始め、2019年に進化型の92Xラインを発表する。HMS開始前に米軍からのフィードバックを集め、改良・提案したM9A3の新しい特徴も盛り込み、歴代シリーズのいいとこ取りともいうべき、人気要素を結集した92の新シリーズだった。
その後、ベレッタのトリガージョブなどを行なうようになり、徐々に現在のようなカスタムガンメーカーへと成長した。ラングドン氏は12年在籍した米海兵隊時代からM9を撃ち続け、92プラットフォームに対して強い信頼と愛着を持っている。
そしてベレッタを使ってUSPSAでグランドマスター、IDPAではディスティングウイッシュドマスターとなった実力派競技シューターでもある。現在のLTTは独自のカスタムベレッタやカスタムパーツの開発・販売を行なっているが、今回はその中でも代表的なモデルを紹介していきたい。
ベレッタに限ったことではないが、アルミ合金フレームのトラディショナルDAを持つハンドガンの時代は過去のものとなり、軍警察用としては今さら大きな採用は見込めないという現実がある。ストライカー方式のポリマーフレームがデューティガン、キャリーガンの主役となっている中で、ベレッタには新しいマーケティングの切り口が求められていた。
その結果としてベレッタは92Xでも特に最上級モデルの92Xパフォーマンスに最も力を注いだ。セイフティは、これまでにも高く評価されていたものの限定的にしか導入してこなかったフレーム側に配置するデザインを復活させ、同時に同じく限定モデルにしか投じてこなかったスチールフレームを組み合わせた。そして1911系に近い操作性を持つデザインが最も歓迎される分野にこのモデルを投入する。それがシューティングスポーツだ。
競技は大きな公的機関に採用されるのと比べると全体的な市場サイズは大きくないが、しかしソーシャルメディアの発達した現在において注目を集められる選手を獲得すれば、コンスタントに一般市場に影響力を与え、牽引する力を生み出す事もできる。
そして1911/2011系やグロックが占める競技の世界で、何を使っても確実に好成績を出せるトップの中のトップ、JJラカーザ(JJ Racaza)を6年契約で獲得する事に成功。CZ75系のタンフォリオから、92Xパフォーマンスをベースにしたオープンガンに持ち替えたJJは、予想通り大活躍を始めた。
スポーツ会には女性シューターの活躍も欠かせない。USPSAのPPC(ピストルキャリバーカービン)で頭角を現していたジェシカ・フック(Jessica Hook)をチームベレッタに迎えて、着実に新たな分野でベレッタの印象を塗り替えている。
ベレッタはこれと同時に、カスタムベレッタに最も力を入れているLTT(ラングドンタクティカルテクノロジー)社を運営するアーネスト・ラングドン(Ernest Langton)の力を借りて、新製品の開発を進行させた。
ラングドン氏こそ90年代からベレッタ92FSを使い、USPSA、IDPA、スティールチャレンジで多くのタイトルを勝ち取り、ファクトリーカスタムベレッタの先駆けとも言えるエリートシリーズ開発に大きく貢献した人物であり、深く92シリーズに精通している。
2018年の92Xシリーズに先立って、ベレッタとコラボした92エリートLTTシリーズを公開。初回500挺はLTTを通じて同年7月に発売され市場に高く評価されている。その背景を伺うべく今回はアリゾナ州にあるLTTを訪問し、ラングドン氏にインタビューを行なった。
| 92G ELITE LTT 口径:9mm×19 全長:211mm 銃身長:119mm 全高:137mm 全幅:38mm 重量:945g マガジン装弾数:18発 メーカー希望小売価格: $1,100 |
長年92シリーズを愛用してきたラングドン氏の理想を形にしたのが92GエリートLTTだ。基本的には4.7インチのステンレス製バレルを持つヴァーテック/M9A3スライドに、M9A1のアクセサリーレイル付きフレームを組み合わせている。軽量化されたDタイプスプリング、エリートIIハンマー、ステンレストリガーを採用し、トリガープルが軽く、スムーズになっている。ダブテイルで交換可能なファイバーオプティックのフロントサイトが付属するこのモデルは、2018年にタクティカルユースやコンペティション向けにベレッタ公式製品としても販売が開始された。
これは2020年に発表された最新バージョンで、本家ベレッタに先駆けたファン待望のキャリオプ(キャリーオプティックス)モデルとなっている。LTTが独自に開発したローマウントオプティックカットにより、スライドにトリジコンRMR/SROマウントのダットサイトを直付けする事が可能だ。その他に摩擦抵抗が少なく耐腐食性に優れるニッケルテフロンのNP3仕上げの各種金属パーツと、トリガージョブによって滑らかなトリガープルを実現した完成度の高さが魅力だ。4.25インチバレルのコンパクト、フルサイズフレームと合体させたセンチュリオンバージョンも選べる。製造番号はLTTから始まる独自のものだ。
| 92G ELITE LTT Compact 口径:9mmx19 全長:197mm 銃身長:108mm 全高:134mm 全幅:38mm 重量:808g マガジン装弾数:15発 メーカー希望小売価格:$1,099 |
コラボによりベレッタからもオフィシャルとしても製品化されている92GエリートLTTコンパクト。ターゲットクラウン加工された4.25インチバレル、短縮化した92Gヴァーテックスライド、ファイバーオプティックフロントサイト、Gスタイルデコッカー、スパーレスハンマー、コンパクトM9A1フレーム、VZグリップ製薄型LTT G10グリップ、フルキャリーベベル加工でシャープエッジを丸めセラコートで再仕上げされている。ベレッタ92の最上級キャリーガンだ。
| 92X Performance 口径:9mm×19 全長:222mm 銃身長:125mm 全高:148mm 全幅:48mm 重量:1,350g マガジン装弾数:15発 メーカー希望小売価格:$1,499 |
米軍サイドアームM9という最大の勲章はもはや過去のものになったが、92系のイメージが色褪せることがないように、ベレッタが注目したのがシューティングスポーツであった。そして2019年に新発表された92Xシリーズは、92系を新たなステージに引き上げるべく、様々な改良を施している。特に同年IWAショーで公開されたこの92Xパフォーマンスは、これまでのシリーズの特徴を盛り込みつつ、新規設計のサムセイフティレバー付きスチール製フレームを導入し、大きな反響を呼んだ。スライド/フレームはニスタン(Nistan)仕上げとなっている。そしてベレッタの売り込みの本気度を示したのが、トップシューターのJJラカーザ(JJ Racaza)と契約した事だ。JJはこれを土台にSAトリガー、コンペンセイターとダットサイトを追加したオープンガンを使用し、好成績を次々に残している。LTTでは92X系にトリガージョブを施したカスタム版を提供しているが、いまだベレッタからの入荷数が少ない。これは純正品で今回比較に用いた。
アーネスト・ラングドン氏は米海兵隊に在籍中にパナマ、キューバ等の紛争を経験。数多くのシューティングスクールを卒業し対テロスクールではインストラクターの資格も得た。トレーニングスクールの運営やガンスミスとして30年以上の経歴を経て現在に至る。競技では2000年にUSPSAナショナルズのプロダクション部門、IDPAナショナルズでエリートIIを使い 優勝、スティールチャレンジ世界大会でもベレッタを使い、98年と99年に2年連続で優勝を果たすなど数々の実績がある。隣は副社長でもある奥さんのエイミーさん。
Special thanks to Ernest & Aimee Langdon


